銀魂
□そして私は恋をする
2ページ/2ページ
「何であんたがここに……って言うか、どどど、どうしてそこに近藤さんが出てくるのよ!バナナは私が非常食用に買おうか買うまいか迷っていただけ」
「声が大きいでさァ。それに今更隠しても無駄ですぜ、この物好き」
にやり、と沖田が嫌な笑い方をした。
こんな時の彼は、もうSモードに入っている。
ちなみに私は沖田が苦手。
何を考えているかさっぱり理解できないし、何より意地悪だ。
だから私が近藤さん大好き、虎視眈々と狙っております、なんてことが知られてしまったら一大事なのである。
そう、一大事なのだ。
「でも近藤さんなら褌でも嬉々としそうでィ」
沖田は私が何も反応を返さないことをいいことに、足元のカゴを持っていこうとする。
いや、というか何故ここに沖田がいるのだろう。
今の時間帯は土方辺りと見回りではなかったのだろうか。
サボり?
「いや、見回り中に外からアンタの悩む姿が見えたんで」
「それも結局サボりじゃん」
「細かいことは言いっこなしでぃ」
ひょいっと沖田はカゴを持ち上げ、何の迷いもなく、今度は私が戻したバナナをそこに入れた。
何がしたいのだこの人は。
「近藤さんは欲しいものはほとんど自分で買っちまいますから。バナナ辺りならゴリラな近藤さんも大喜びでさァ」
親指をぐっと立てて見せる沖田に、思わず眩暈がした。
それ以前に、近藤さんはあなたの上司だろうに、一応。
するとその考えていたことが思い切り顔に出ていたのか、沖田は言った。
「何、近藤さんはゴリラと呼ばれたぐらいじゃ怒りませんて。ハートは傷つくけど」
「ダメじゃん、傷つけたらダメじゃん」
初めにバナナを選んだ辺りが私も同じなのだが、そこは気にしない。
しかし沖田は聞いているのかいないのか、ただ一つ溜め息をついて私を見ただけだった。
「……何?」
「いや、あの天然加減に傷ついてんのは、あんたも同じでしょうに」
呆れたように言う沖田に、私はほんの少し首を傾げた。
届かないのは俺も同じ。
ただただ、お前の幸せを願おうと思う。
fin...?
沖田くんも虎視眈々と狙っております。