REBORN!

□離さないでいて
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人というものがいかに弱く脆いものか、あの男は良く知っている。
知るだけではなく、理解もしていたはずだ。
指先程度の銃弾にすら奪われてしまう、そんな生命。

だからこそ、彼は守られていなければならないのに。



離さないでいて。



「ツナ……。馬鹿かお前」

「あれ、フリーの殺し屋さん?」

私がしみじみとつぶやくように言ってやると、ボンゴレ十代目である沢田綱吉は驚いたように眼を見開いた。

その呑気な声にこっちが頭を抱えたくなる。
状況から言えば、頭を抱えるべきはこの男だというのに。

「わー、こんなところで不謹慎だけど、嬉しいな。この前は、名前も教えてくれないまま消えちゃっただろ?」

護身用らしい殺傷能力の低い38口径のハンドガンを構えて、にこにこにこにこ。
少し前にしてやった忠告は、全く聞き入れてもらえなたかったようだ。

「お前、あいつらに殺されるつもり?」

そのハンドガンを示しながら呆れたように言うと、ツナはいや、と小さく首を振った。
すぐさま左手で自分の懐を探り、スーツに不似合いな手袋を取り出す。

どうやら死ぬ気になる準備はバッチリのようだ。

「でも、殺し屋さんはどうしてここに?」

けれどツナは、私が何故この場にいるのかが気になるらしい。
じっとこちらを見てくる。
その眼は相変わらず甘く優しいものだが、その中に暗いものがあるのも、私は知っていた。

「今回は、助けにきてやったんだ。一回逃がしてもらってるから」

前回の私とツナは、殺し屋とそのターゲットとして顔を合わせている。
勿論殺しは失敗して、けれどそれを咎められることはなかった。

私自身にこの仕事に執着して無かったからか、それともツナがマフィアのボスには前代未聞の「甘さ」を持つ人間だったのか。
どちらでもいいが、結果的に私は彼に逃がしてもらったのだ。
しかも守護者たちの目に付かないように。
私にとって、この恩は大きかった。

「え、嘘」

「嘘なんかついてどうする。それに一応、依頼としてきてたんだ」

お金は貰わないけど。

そう続けたらツナはひどく感動したように、目を輝かせた。
しかしすぐさま真面目な表情に戻って、疑問に感じたことを尋ねてくる。

「でも、依頼って?」

「リボーンってのから」

予想の範囲内らしいその名前に、ツナは乾いた笑いをこぼす。

「あはは、やっぱり」

「やっぱりじゃないよ。それより、よくそんな軽装で出られたな」

ツナを上から下まで眺めれば、これが戦場にいるマフィアのボスなのかと溜め息をつきたくなった。
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