REBORN!
□離さないでいて
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多分防弾チョッキくらいは身に着けているのだろうが、きっと相手だってそれくらい予想している。
アーマーピアシングなんかを使われたら、ひとたまりもないだろう。
「うーん、一応囮ってことで身軽さを重視してみた」
「身軽すぎ」
「本当はこの時点で獄寺くんもいたはずなんだけど、別のとこに配置させちゃった」
「本物の馬鹿だ」
リボーンという人物から、大まかな作戦については聞いていた。
短く要約して表すなら「ボンゴレ十代目を囮に反勢力を一網打尽」らしいが、このままでは囮どころか喰われる覚悟をさせた撒き餌にしかならない。
多少のハプニングがあろうと、絶対に自分の護衛は外すべきではないというのに。
「まあそれを予測しての私だから、ある意味良かったかもね」
守護者とは顔を合わせたくなかったと言うのが私の本音だ。
いつもより小柄なハンドガンを懐から取り出し、とりあえず確認だけしておく。
「逃げるのを、最優先にするよ」
ツナはそれにほんの少し呆気に取られて、ぽかんと口を開けた。
なんか、イラッとくる。
それが私の表情に出たらしく、彼は慌てて両手を振った。
「いや、まさか、逃げ道確保の救援依頼だとは」
「私も驚いた。まさか殺し屋にそんな依頼がくるなんて」
でもツナがいるボンゴレだから、それだけで納得できる。
彼は本当に甘い。
普通は差し向けられた殺し屋を、生かして返すなんてことはしない。
けれど沢田綱吉は、それをやってのけるのだ。
次はオレの依頼をきいて欲しいなぁ、なんてつぶやきながら。
百パーセントの仕事もしない私に。
「でも受けたからには、絶対にここから無傷で返してやる」
私を逃がしたことを意味のあることにしてやりたい。
こんな風に思ってしまったのは、何故か。
私の気持ちの問題か、彼の人柄が原因か。
「私が命を懸けてで」
「それは断る」
決めるべき言葉が、あっさりと中断させられた。
「はっ!?」
「オレは何と言われても、君を守るよ。折角助けたのに、こんなところで死なれたら困るもの」
にっこりと、ツナは笑った。
思わず、彼の部下が哀れになってくる。
こんな後先考えない無鉄砲な上司を守るのは、本当に大変だろうに。
「だからオレはここから出るまで、君を離さないことにする」
どこかで、爆発音が上がる。
人の悲鳴と、怒号。
けれどそれは、どこか遠くの出来事のよう。
「分かるね、可愛い殺し屋さん」
優しい眼が、剣呑な光を灯した気がした。
「だから君もオレを守るなら、離さないでいて」
fin...
離さないのはどちら?
お題提供:A.M 0:00様