皐月書庫
□狐雨
1ページ/3ページ
とても微かで
それが切なくて
でも確かに
貴方を感じたのです
その日、幸村はまだ日も明けぬ内に目が覚めた
目を擦りつつ障子の閉まった窓側を眺める
幸村「…雨、か?」
ほんの微かであるが夜明け前の薄闇に、春雨の降りる音が優しく響く
然したる意味も無く布団から抜け出し、廊下の雨戸を開けて庭を見た
幸村「ほう…狐の嫁入りか。」
絹糸の様にはかな気な雨の中に沈みつつある月が浮かんで見えた
ふっと幸村は先程見たであろう夢を思い出したが、一瞬の事でそれが何なのか掴み切れなかった
只雨を見た瞬間夢の中で感じた匂いを思い出した
しかし何の匂いかも全く覚えていない
幸村「雨…?」
と、言えば?
寝起きで霧がかった頭で考えても思い出せない
幸村「っくしゅん!」
体を冷やしてまで考える事もあるまい、と幸村は鼻を擦りつつまた布団に入った
そして狐雨を見ながら微睡んでいた幸村は、夢の中で誰かに出会ったのだった