皐月書庫

□狐雨
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とても微かで


それが切なくて


でも確かに


貴方を感じたのです








その日、幸村はまだ日も明けぬ内に目が覚めた


目を擦りつつ障子の閉まった窓側を眺める


幸村「…雨、か?」


ほんの微かであるが夜明け前の薄闇に、春雨の降りる音が優しく響く



然したる意味も無く布団から抜け出し、廊下の雨戸を開けて庭を見た



幸村「ほう…狐の嫁入りか。」


絹糸の様にはかな気な雨の中に沈みつつある月が浮かんで見えた







ふっと幸村は先程見たであろう夢を思い出したが、一瞬の事でそれが何なのか掴み切れなかった


只雨を見た瞬間夢の中で感じた匂いを思い出した


しかし何の匂いかも全く覚えていない




幸村「雨…?」


と、言えば?







寝起きで霧がかった頭で考えても思い出せない



幸村「っくしゅん!」


体を冷やしてまで考える事もあるまい、と幸村は鼻を擦りつつまた布団に入った





そして狐雨を見ながら微睡んでいた幸村は、夢の中で誰かに出会ったのだった
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