SLAM DUNK
□SS
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青空に浮かぶ白い月
ぷかぷかと波間に漂う黄色い浮が時折小さく沈んでゆくが、その糸の端で佇む仙道にはどうでも良かった
ただきらきらと波打つ海をぼうっと見つめ焼け付く陽射しに眉をひそめる
ただそれだけ
越野怒ってるだろうな、なんて小さく呟きながら
こうして練習をサボりそれが原因で越野を怒らせている自覚はある
だがそれに対して申し訳ないだの気をつけなくちゃだのの意識は出ない
ただ自分がサボった事と越野が怒る事は理解しているだけで
いつもと変わらないそんな初夏の海
「あれ…センドー…?」
そんな日常を揺るがす小さな声
振り返ると太陽を目一杯吸い込んだ茶の髪を汗でぐっしょり湿らせた他校の先輩
「藤真さん?ランニングですか?お疲れ様です。」
「綾南は休みか?」
「え、いや…まあ…。」
爽やかな顔がくしゃりと歪む
「ははっ、どうせサボってんだろ?相変わらずだなぁ。」
相変わらずなんて言われるほど話した事あったかな、と笑顔とは裏腹に頭の中をフル回転させる
「酷いなあ、精神統一してるんですよ。
今日一年は自主練だったんで。」
「なるほどね。」
返事は返ってくるがぎらぎらとした獣の様に金色にも見える色で光る瞳は、自分を通り越しどこか遠くを見ている様だった
「綾南も大型新人が来たもんだな。」
けらけら笑う度に顎からぽたぽたと落ちる汗がコンクリートに丸い染みを作る
「1年からレギュラーの藤真さん程期待はされてませんよ。
所で何で俺の名を?」
「他校の新人も覚える事にしてんの。」
少しの沈黙の後小さな笑い声
「嘘だよ、嘘。そんな呆れた顔すんなよ。
いずれ戦うだろう奴だけはチェックしてんの。
翔陽だけでも覚えんの辛いのに一々全員覚えてられっかよ。」
何かちくちくした物が喉の奥をつっついていた
「俺、いつか藤真さんと戦うんですかね?」
「さあねぇ。ウチみたいに新人を出す程田岡さんが賭に出る訳はないだろうからな。
お前が2年になったらじゃねえ?」
「そうですか。藤真さんがそう言うなら楽しみにしてます。」
何度も何度も飲み込もうとしてもざわざわとした何かが奥の方にこびりつく
夏の暑さを予感させる様な甘ったるい何かが
「予選、楽しみにしてる。」
差し出された握りこぶしにこつんと自分のそれを重ねると、触れたそこがじわりと温かくなる
「それじゃ、また…。」
end
藤真2年仙道1年設定
2007/7/31