SLAM DUNK

□陽炎
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「「お疲れっしたー!」」

所狭し並んだ体育館で全員での挨拶で練習はスタートしそして終わる

体育館のモップかけ、部室の施錠が終わるまで自分が当番でない時でも監督責任者である藤真は帰らない
またその隣に花形が付き添うのも定例のようになっていた

「藤真ー!お先ー!!」

遠くから聞こえる声に軽く手を挙げ答える

伊藤に指示を出されながら流れ作業のように1、2年が頭を下げながら次々帰宅して行く

「藤真さん、これでラストです。」
「お疲れさん。じゃ帰るか。」

カチリと静かに部室の鍵をかけた

「それじゃ気をつけて帰れよー!」

藤真は一声叫ぶと器用にひらりと花形の自転車の後ろに飛び乗った

特に試合前は練習後花形の家に寄って行くのも決まりみたいになっている
練習や段取りなど具体的でない何気ない会話は部室よりお互いの部屋のがしやすい、という理由からいつの間にか習慣になっていた

「藤真、母さんが夕飯食べてくかって。」
「お!じゃあ頂いてく!」

冷たい麦茶を2つ持って花形が部屋に戻ってくる

「何してるの?」

俯き世話しなく手を動かす藤真に首を傾げる

「毎年恒例、だろ?」

その手にはてるてる坊主
横に目をやれば3、4コ固まって小さな山となっている

「確かにそうだけど…。
一体何個作る気なんだ?」

麦茶で少し口を潤わせて、また次のてるてる坊主作成にかかる

「この部屋のカーテンレールに一つずつぶらさげるだろ?あと部室にも。
だから…えっと、あと何個必要だ?」

ニカッと笑いながら黙々と手を動かす
途中運ばれてきたポテトサラダと唐揚げ、冷し中華を次々と口いっぱいに頬張りながらも作り続けた

「食べてからにすればいいのに。」

そんな藤真を見て呆れて小さく溜息をつく
ただ子供みたいに無邪気に飽きる事なく作り続ける様に小さく笑みもこぼれる

「だってめんどくさくてさー。
家でやりたくないからここで作っとかなきゃだろ?」

憎まれ口を叩きながらもキラキラした目でてるてる坊主を見つめている

「まったく、素直じゃないんだから。」
「ん?何か言ったか?」

いいや、と小さく首を振る
すると何を思ったのか這って花形へと近づいてくる

「背中貸して!
屈んでたら腰痛くなってきた。」

よいしょ、と背中あわせに寄り掛かってくる重みに否応なしに机にむかわされる

「…仕方ない。
じゃあ部誌の整理と会計帳はやっておくよ。」
「お!サンキュー!!」

触れ合ってる部分がじんわりと汗ばむ
だが、そこに扇風機の風が当たる度ぞくりと冷えると、あぁ夏なんだなぁと思わされる

「この顔、高野に似てねえ?」

笑いながら花形の目の前に新しくできたてるてる坊主をずいと差し出す

「ははっ、そうだな。」

じゃあみんなの顔も描かなきゃな、なんて自然にお互いの口からこぼれでた
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