novel

□:聖夜の贈り物:(エドウィン)
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−クリスマスには帰れそうだよ

数日前に聞いた彼の声を頭の中で繰り返す。
先ほど列車がこの駅に着いてからもう大分経つ。誰も居なくなった駅のホームで目の前に伸びる線路の先の闇をウィンリィはただじっとみつめていた。

『うそつき…』

ぽつり、呟いた声は誰にも聞かれることなく闇の中に消えてく。
夕方から降り出した雪は吹雪かないまでも、足元に白い絨毯を敷き詰めるには十分で、しっかり着込んでいるはずなのに寒さにカチリと奥歯が鳴った。
静かに時を刻んでいた駅の時計が急に騒々しく鳴り響き、聖夜の終わりが近づいたことを知らせる。もう帰ろう、そう思ってウィンリィが椅子から腰を上げようとしたときだった。視界の端に捉えた光。
それは暫くすると歯車の動く音、ピンと凍り付くような空気を切り裂く汽笛と共に大きくなり、そして目の前で止まった。
こんな田舎の駅に、それもこんな時間に降り立つ人間は少ない。
赤いコートに金髪の三つ編みの少年。待ち人はすぐに見つかった。
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