乱受け小説
□拍手小説
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以前、友人に好みのタイプを聞かれた事がある。
俺にとって一番のタイプは豆腐だったから、『豆腐』と答えたら、殴るぞと怒られた。
仕方無しに人間でのタイプを模索し
『(豆腐のように)肌が白くて (絹のように)滑らかで (見た目的に)美味しそうな子』
そう、答えた。
友人には『最後の言葉が危険だな』と冷静に突っ込まれたが、14歳の思春期の男子なんてそんなものだろう。
誰だって、胸がでかくてムチムチとしている美味しそうな子の方が良いに決まってる。
なのに。
なのに、だ。
ああ、この感情は何なのだろう……
「あ。乱太郎君だ」
「お。ホントだ」
廊下の窓から校庭を眺めていた雷蔵の呟きに反応し、三郎が窓枠に寄り掛かる。
一緒に話をしていた俺も窓に近づき校庭を眺めてみたが、一年生の忍たまが大勢でサッカーをしていたのでどの子に反応しているのか分からなかった。
「乱太郎って、どの子?」
「え?兵助は知らないんだ?」
「マジで?」
有り得ない、と言いたげな目で二人に見られて、首を傾げる。
そんなに驚く事でもないと思うんだが…。
「委員会が一緒にならない限り、一年生と接する機会なんてそうないだろ?」
「んー、普通の一年生ならそうなんだけど、乱太郎君は『は組』の生徒だし…
色んな事件に巻き込まれる事で有名だから…」
「それもあるけど、可愛くて人気もあるからなー。何せ、あの六年生達もご執心だ」
知らない方がオカシイ、なんて指差されて、ムッと眉間に皺が寄る。
興味が無いのだから、知らなくても仕方無いではないか。
大体、男(しかも10歳の子ども)相手にご執心って…
「お前等の方がオカシイって」
お返しとばかりに、三郎に向けて指を突き付ければ、鼻で笑われた。
雷蔵にまで、可哀想な子を見るような目で見られる。
「「兵助は、豆腐以外は目に入らないんだね(な)」」
「三郎も雷蔵も失礼だなー!確かに豆腐は好きだけど、女の子だってちゃんと好きだって!!」
一人廊下を歩きながら、先程の件を思い出して呟く。
豆腐以外に興味が無い訳じゃない、男に興味が無いだけだ。
「男に、しかも10歳の子ども相手に“恋愛感情”持てるか、って話だよ…」
はぁ、と溜め息を吐いて廊下を曲がれば、勢い良く走ってきた一年生にぶつかってしまった。
倒れそうになった体を引き戻そうと腕を引っ張れば、小さな体は俺の腕の中にすっぽりと収まった。
「悪い、大丈夫か?」
「あ、はい!
此方こそ、前も見ずに走っていたので…ぶつかってしまってすみませんι」
済まなそうに眉をハの字に下げて、一年生が見上げてくる。
珍しい赤い髪と、翡翠の瞳が印象的な子ども。
鮮やかな色彩に目を見開いて見つめていると、翡翠の瞳が不意に柔らかく細まった。
「倒れないように支えて下さって、ありがとうございました」
ふんわり
そんな表現が似合う穏やかな笑みで、子どもは笑った。
「あ。私、用事を言い遣っていますので失礼します!」
再びバタバタと走り出す子どもを、目で追う。
急激に頬に集まっていく熱に気付きながらも、俺はその理由を認められずにいた。
相手は、男だった
一年生なのだから、当然10歳位だ
肌は健康的な、少し陽に焼けた色をしていて、決して白くは無かった
滑らかではあったが、欲情出来る程では無かった(と、思いたい)
決して、俺の好みのタイプでは無かったのに
「何で、年下の男にドキドキしてんの、オレ…ッ///ι」
赤い顔を隠すように、頭を抱えて踞る。
さっきまで、男を恋愛対象にするなんて有り得ない、変だと、否定していた筈なのに。
赤い髪に惹かれて
翡翠の瞳に見惚れて
愛らしい笑みに、墜ちてしまった
「どうしたら良いんだ、この感情…ッ///ι」
俺が不覚にも恋情を抱いてしまった子どもが、雷蔵達の言っていた“乱太郎”だと知るのは、少し先の噺。