日常の末端

□てがみ
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謹啓
 呉葉。私がこのような手紙を書いていると知ったら、あなたは怒るかもしれませんね。私に不似合いなのは分かっています。それでも、普段とは違う、別な方法で、私はあなたに言葉を残したい。ある意味で、これは遺書だと思っていただけると幸いです。

 あなたと一緒に住むようになって、私はあなたの良いところも悪いところも、幼馴染みですら分からなかった新しい一面を発見し、まだ知らない部分があったのかと驚いています。きっとあなたも私と同じように感じていると考えて、まず間違いはないでしょう。それでも、どんな悪い面を見ても、あなたのことを嫌いになれないのだから、私は最早、病気なのだと思えてなりません。あなたが、私の他愛ない冗談で笑っているときも、ドラマに感情移入して泣いているときも、つまらないことで喧嘩になり怒っていても、仕事が上手くいかなくて自己嫌悪に陥っているときすら、私には愛しく感じられるのです。このようなことをあなたに直接囁いたら、あなたは顔を真っ赤にして物を言わなくなるでしょう。容易に想像がつくのは、先も述べたように、私が病気だからです。
 
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