日常の断片

□わたしの好きなひと
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 午前十二時、ジャスト。
 本日は透冶の誕生日。

「とぉーじ! お誕生日、おめでと!!」
 透冶の彼女であるのばらは、お祝いの言葉を優しく耳元で囁き、唇に軽く触れる。短い金髪は、のばらの手のひらに柔らかく馴染んでいた。

「のばら、二年の記念日おめでとう」
 そこそこ格好良い彼は、唇の端だけ引き上げて、のばらの体へと手を伸ばした。

 甘い甘い一夜の後は、いつもと変わらない、平凡な朝。
 鳶職の透冶は朝早く起きて、のばらを起こすことなくパンと牛乳でお腹を満たし、現場へと向かう。
 のばらはというと、その日の短大の授業によって、起きる時間はまちまち。


 しかし。今日は特別だった。
 のばらは透冶のために、素敵なディナーを用意するつもりなのである。
 彼が一人、玄関から出て行ったのを確認して、彼女は勢いよくベッドから起き上がる。
 昨日酷使し過ぎた腰が、若干痛みを訴えたけれど、そんなことにかまってなんかいられない。
 冷蔵庫を確認して、足りない材料を手帳に書き込み、部屋を掃除して。
 休憩。コーヒーを飲む。
 
 すると、のばらの友達、麻子からメール。
 今日の二限目は出席しないとやばいらしい。
 とりあえず午前中の講義に出席するべく、のばらは短大へ向かう支度を整えた。
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