日常の断片

□美しい人
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 私の部屋にはガラスのビンに入ったビー玉や本物そっくりの造花、夕焼けや深い森、南の島の海などの写真がきれいに飾ってある。

 私は美しいものが好き。人間も一緒。友達も彼氏も美しい人を選んで付き合う……中身は二の次だと思っている。

でも私が心から完璧に美しいと思う人間は誰一人いなかった。テレビに出ている芸能人も、映画に出てくるハリウッドスターでさえも完璧な美しさを持ってない。だから、私はいつしか完璧な美しさを追い求めるようになっていった。

 そしてある日私の夢に、純白の服に身を包んだ完璧な美しさを持つ男の人が現れた。

 やっと出会えた……

 目覚めてすぐ、私は彼を探し求めた。自分でも不思議なことに、彼は近くにいるだと信じ込んで全く疑わなかった。しかし現実は上手くいかないもので、何日かかっても彼を見つけだすことはとうとう叶わずに終わった。

 数日後の諦めがつかずにいたある夜、夢の中でまた彼に会った。私は必死になって叫ぶ。
「あなたに会いたかったの!!」
「お前の望みは何だ?」
「え?」
「なんだ……それが目的じゃないのか?」
私には何が何だか分からなかった。だから必然的にしばらくの間、呆然と彼を見ていた。
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