お題小説
□氷の化石
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はる、ぽかぽか、いい天気。
そう言ってふわりと笑う母がまぶたの裏に映る。
「ミコトくん……」
休み時間、声をかけてきたのは隣のクラスの秋山さん。
「どうしたの?」
「お母さん、残念だったね」
「ああ。……ありがとう」
恐らく彼女は良かれと思って声をかけたのだろう。優しいと素直に思う。
でももっと優しいのは、朝から何も言わないけどなんとなく僕の近くにいる幸太じゃないかと思う。
幸太はふざけた性格の持ち主で、こうやって何も言わないのは不気味だけど、傍にいてくれる心地よさはさすが悪友。
水琴は氷の化石って知ってる?
きっと、クリスタルみたいに綺麗なんだろうなぁ。
じろじろ幸太を眺めていたせいだろうか、僕の前の席に座って読んでいた本から視線を挙げて、不思議そうに僕を見る。
その視線は僕の目を離れ、耳へと移動していった。いや。正確には、耳たぶに光る石へと……。
「水琴、それどうした?」
「ピアスか?」
「ああ」
「これは……」
「母さんの形見なんだ」