お題小説
□SoRa
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なんだかなぁ。
好きで好きで堪らなくて、あいつのためならなんだってやってあげたのに。
それなのに、あいつ! あの、自分のことをイケてるって思ってる、勘違い男。
浮気して、そっちの女に乗り換えたんだよ!
信じられる!?
彼女から吐き出される言葉が、次第に荒々しくなってきて。遊具の取り合いをしていたはずの小学生たちが、訝しげにこっちを見てるなと思っていたら。
あぁ、本格的に泣き始めた。
何もこんな所で泣かなくても。昼過ぎの公園じゃ、人目に付き過ぎる。
言ってることは元彼への単なる恨み言で、キレイな別れ方じゃなかったんだって想像が付くのに。
目の前で泣いている、この身長170センチの女の子は、どうしようもなく、キレイ。
肩甲骨辺りまで伸びた黒髪は、ゆるい曲線を描いて、白い肌に艶を与え。
彼女の手から乱暴に払い落とさせる涙は、太陽の光を吸い込みながら、地面に潤いを施し。
腫れた目元も、赤くなった鼻も、歪んだ唇でさえも。
仕方ないから、僕の肩に、彼女の頭を押し付ける。
だって、僕と彼女はオトモダチだから。泣いていたら、肩を貸すのって当然のことだと思うし。
ただ、身長が163センチしかないから、彼女の首が痛くなりそうで心配。
「元彼、いい人だったんじゃないの?」
付き合っていた当時、優しいだの、カッコイイだの、褒めちぎっていたのを思い出して、そう訊ねる。
「浮気するなんて、いい人がすることじゃないでしょ」
涙声での呟きに、そうだね、と相槌を打つ。
なんとか泣き止もうとしているのか、声を出さずにしゃくりあげ始めた彼女は、俺の胸を押して、顔を上げる。
「こんなに天気がいいなんて、反則よ!」
ぐっと太陽を睨んで。ついでに俺も睨んで、
「あんたも、反則」
散々泣いて、ぐちゃぐちゃになった顔で彼女は笑った。
やっぱり、キレイ。
青空が、よく似合う。