お題小説

□純潔
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Chpter1


 私は今、大学の掲示板の前にいる。今日から始まるゼミの教室を確認するために。
「ええっと……5021。5号棟の2階か。」
 周りに聞こえない程度に呟いて、五号棟を目指し歩き始めた。


 がらがら、といかにも建て付けにガタがきているような音とともに、女の子が1人5021教室に入っていくのが見えた。私はちょうど階段を上りきったところだったので、声をかけることは出来なかった。ふんわりとした茶色いウェーブの髪が印象的だった。
 きっと可愛い子なんだろうな、と思いながら目的の教室の扉に手をかける。
「あれ。もしかして翔子?」
 突然後ろから声をかけられる。扉から手を離して後ろを振り返ると、そこには何度か同じ授業をうけたり、ご飯を一緒に食べたりしている沙耶加が階段から続く廊下を歩いてきていた。
「沙耶加! 一緒だったの?」
「うん。翔子も一緒だったんだね」
「みたいだねー。またよろしく!」
「こちらこそ」

 そう笑いあって扉を開けて教室に入る。すでに席についていたのは6人。
 女の子が4人と男の子が2人。男の子の方は黙っていた。男同士は知り合いではなかったのだろう。女の子の方は2人が喋っていて、残りの2人は男同様に黙っている。1人はメールでもしているようだった。
 私と沙耶加は一番後ろの席に腰掛ける。一つ前には携帯をいじってる女の子がいる。私が可愛いと思ったあの女の子だ。沙耶加はその女の子に話しかけた。
「ね、あなたも野仲ゼミなんだよね?」
 いきなり話しかけられてその子は一瞬びっくりしたようにこちらの方を向いた。しかし次の瞬間には振り返って、にこやかな顔を見せた。特に美人さんと感じるような顔立ちではなかった。しかし決して不細工ではない、いわゆる『普通』である。
「うん。そうだよ」
「あ、私は沙耶加ね。で、こっちは……」
「私は翔子よ」
「さやかとしょうこね。私は香織」
「かおりね。なんて呼べばいい?」
 私の問いかけににこやかに笑って答える。
「香織ってそのまま呼んで?」
「了解!」
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