【桜乱】Short S
□お弁当
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■あおい,由佳利のお弁当
キーンコーンカーンコーン
小学校のチャイム、お昼だ。
「ご飯の時間です!」
「今日はお弁当の日ー!」
あおいは由佳利と瑠海の方へ机をくっつけ、ドンッと机に弁当を出す。
「さぁて、今日のおかずは何かな〜?」
わくわくと包みを開くあおいを見て瑠海は「あれ?」と呟いた。
「今日は二人で作った物ではないのですか?」
「うん。今日はお母さんが朝作ってってくれたから! ねっ!」
「あおいママのお弁当はたまに雑だけど、とっても美味しいです!」
由佳利は中島家、つまりあおいの家族と一緒に住んでいる。
あおいの母親は仕事でなかなか帰って来れない。だからお弁当の日はたいてい二人で残り物や冷凍食品を駆使した弁当を持ってくるのだ。
「お母さん、今回は何入れてくれたのかなっ」
「冷蔵庫からウインナーが消えてたから、きっとタコさんウインナーとかです!」
「タコさん……っ」
瑠海は少し笑みを浮かべる。
「そうだといいなあっ」
3人の視線はあおいのお弁当へ……。
いざっ!
カパッ。
卵焼き、ほうれん草のおひたし、かまぼこ、予想以上に色とりどりだ。
ウインナーで出来た足も見える。
「あっ! やっぱりタコさん……ウインナー?」
何かに気付くと、あおいの顔が急に冷める。いきなりのダウンに瑠海も由佳利もびっくり。
「ど……どうしましたか?」
「何か…………違うよ」
見るとタコさんになる、はずだったタコさんウインナーは、両側に4つの足が。
由佳利も蓋を開けてみる。やはり同じようなおかず、同じようなタコさんウインナーが入っていた。
う、うわぁ……。
そんな空気が流れる。
「タコさん……なのでしょうか、これは」
「両側合わせて足が8本だから、タコさん……、タコさんかもです」
瑠海の質問に由佳利は苦笑いする。そこにあおいが透かさず反論。
「いやいや、タコさんって呼べないよ! だって……、見た目違うし! 頭にも足あるんだもん!」
「でもでもっ、足が8本…」
「いや頭から足はえてんだよ?」
そしてあおいからとどめの一言。
「怪物じゃんっ!」
……。
【怪物】:正体の分からない生き物
※辞書より
う……ううぬ……
あおいの母はきっと、急いでいたのだろう。急ぎすぎて、両方に切れ目を入れてしまったのだろう。そしてそのまま焼いて……。
だが、ここはあおいだ。気にしない気にしない。
「でもまぁ、形はアレだけど美味しけりゃいいか☆」
「そうですねっ」
「あおいの言う通りです!」
忙しい中、奇妙なタコさんを作ってくれたあおいの母に感謝を込める。
あおいと由佳利は手を合わせて、
「「いただきまーすっ!」」
平和な平和な昼下がりであった。
パクっ。
「お味はどうですか?」
「「……」」
しばし沈黙。
「ちょっと……焦げっぽいね!」