07.vol1

□-an eternal flower garden-
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「アユもそろそろ高校生だね」
「入学式の準備しなきゃな」


今年の3月、無事高校受験に合格したアユは4月からタカとエレンと同じ高校に通う。
実はフラウは妹や弟たちの通う高校の教師なのだ四兄妹揃って学校でお目にかかる日も遠くはない。


「アユがあたしたちと同じ高校なのはいいけど、また問題が増えるね」


エレンが一つため息をついた。フラウもタカもうんうん、と頷く。
しかしアユは不思議そうに首を傾げた。


「問題って…?」


その問いに三人は凍りついた。


"お前…自覚していないのか…?"


口には出していないが三人とも意見は同じはずだ。


「も、もしかして…学費とかのこと…?それならあたし、学校に行きながらバイトするよ!だから、高校には行かせて…?」


一人で勝手に勘違いをしているアユをタカが止めた。


「違ーう!そんなんじゃねぇ!可愛いオレたちの妹が高校っていう自分と学力が同じレベルの奴と極端に変な奴しかいねぇところに……ぐはっ!」


勢い余って喋りだしたタカにフラウがボディーブローを入れた。


「な、何すんだよ…!あに…」


腹を抱え涙目で、隣にいるフラウを睨む。
眉間に皺を寄せているところから相当強く入れられたのだろう。
しかし、フラウの冷たい蒼い瞳とかち合い、しりすぼみとなってしまった。


「お、お兄ちゃん…大丈夫…?」


首を傾げて心配する妹の可愛さにタカの顔はゆるむ。


「ああ、大丈夫だよ、ありがとアユ」


つまりタカが言いたかったのは、中学のときはそうでもなかったのだが、やはり密かにアユを狙っている奴はいた。
告白されることもあった。
中学はどうしても教師たちに厳しくされるところでもあったのでアユを襲う奴ひいなかったのだが、高校はそうもいかない。
アユたちの通う高校は有数の進学校であり、成績の優秀な奴ほど常識がまずまずあるため、学校の規則は緩いうえ、教師たちもあまり口出ししない。
さらに成績の優秀な奴ほど何を考えているのかわからないものである。
そんなところに妹を入れたくないのだ。
いつ襲われてもおかしくない。
しかしここで「高校には行くな」なんて言ってしまったら高校に行きたい彼女の意見は破棄されてしまう。
学年は違ってもいつも側にいたいのだ。


「タカは高校は中学よりも人数は多いし、性格もいろいろな奴がいるから、いじめとか変なことに絡まれるな、って言ってるんだ」


フラウがタカのフォローをした。


「そうなんだ…心配してくれてありがと、お兄ちゃん。あたしは大丈夫だよ」


"兄貴…!ありがと…!!"


タカは心からフラウに感謝した。

朝からこんなに人を和ませる人はそうそういないだろう。
だとしたらアユはある意味物凄い才能の持ち主である。
この兄妹にはかかせないだろう。

そして今日も花のような朝を迎えた彼らはまた幸せが訪れるに違いない。




Fin.
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