BROTHERS CONFLICT

□白雪姫
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とある日の夕食後。

弥「おねえちゃんおねえちゃーん!」
絵「ん?」

ダダダダと足音を立てながら、右京と一緒に食器を洗っている絵麻の後ろに弥は抱きついた。

絵「わっ!」
右「こら、弥!」

右京のたしなめるような呼びかけには応答せず、弥は話し続けた。

弥「おねえちゃんなにか可愛いワンピースとか持ってる?」
絵「ワンピース?」
右「弥、片付けの途中ですよ」
弥「えー今終わるのにー」

ぷう、と弥は頬を膨らませる。
絵麻は弥の目線に合わせるように屈むと、

絵「ワンピースならあるよ」

と話を促した。

弥「よかったー!」

弥は手を大きく広げ喜ぶ。
しかしワンピースの所持を聞いて何をするつもりなのか。

弥「ねえねえきょーたん、これからひかるんもお家に来るんだよね?」
右「え、ええ。久しぶりに帰ってくるとこの前言ってましたからね。そろそろ来る頃だと」
弥「よーし!じゃあすぐ準備しよーっと!」
絵「あ、あの弥ちゃん。これから一体何をするの?」

キッチンから去ろうとする弥を呼び止めると弥はくるっと振り向き、何か雑誌のようなものをくるくる丸めたものを上にあげ、こう叫んだ。

弥「これからみんなでお芝居するのー!」
絵・右「え、えええ!?!?!?!?」

夕食後だったせいもあり、リビングに兄弟が集まるのはさほど時間はいらなかった。
マンションには一緒に暮らしていない光もその後すぐ到着し、これから行う内容を要から聞いているところだった。

弥「つっくーん、なっくんはまだ?」
椿「棗もついさっき仕事から帰ってきたみたいだぜー。ほら☆」

椿は自分の携帯電話を弥に差し出すと電話の向こう側から棗の声を荒げるのが聞こえる。

棗『おい!椿!どういうことだ、ちゃんと話せ!!』

もはや携帯電話を耳元に持っていかなくても聞こえる声量に椿はただいたずらっぽく、

椿「じゃあバイバーイ☆」

と電話を切ってしまった。
絵麻は棗があまりにも怒っていたのでもしかしたら来ないのではないかと心配したが、

椿「大丈夫大丈夫。あいつには絵麻のごはんが待ってるよーって言っておいたから!」
絵「は、はあ…」

何の根拠を持って言っているのかは分からないがどうやら来るようだ。
そして椿の言う通りその十数分後本当に棗はやって来た。
急いでやって来たらしく、うっすら汗をかいている。

椿「お、来た来た」
弥「なっくーん!早速やろー!」

棗がリビングに入るなり椿と弥は彼を半ば強制的に引っ張った。

棗「はあ!?な、なにを、ちょっと待て!引っ張るな!!」
絵「あの、言われたとおりごはんの用意を…」

棗が来たことによりリビングはより一層騒々しくなり、雅臣の言葉でようやく静かになった。
そして、

弥「これからみんなで白雪姫をやります!」

もう誰も反論する気はないようだ。
弥はそれぞれ指差しながら兄弟たちに役を発表していく。

弥「まず主役の白雪役はもちろんおねえちゃん!」
絵「は、はい!」
弥「王子様役はいおりん!」
祈「任せて」
弥「女王役はひかるん!」
光「あら私にぴったりじゃない」
弥「魔法の鏡役はかなかな!」
要「お、いいね」
弥「小人役はまーくんときょーたんとつっくんとあっくんとなっくんとるいるいとふうたん!」

呼ばれた7人はそれぞれ互いに見合わせる。
そして、

弥「もちろん小人のリーダーはまーくんだからね」
雅「え、あ、はい!分かった」
弥「森の猟師役はすばるん!」
昴「…猟師役って何すりゃいいんだ」
弥「よーし!みんな役が決まったところで!」
侑「ちょーっと待て!!」

侑介が弥の言葉を遮って前に出た。
みんなが侑介のほうを一斉に向く。

弥「どうしたの?ゆーくん」
侑「どうしたの?、じゃねーよ!俺だけ役ないじゃねえか!!」
弥「あ」
侑「あ、じゃねーよ!それによ、弥!おめーも役ないじゃねえか!!」
弥「ん?ぼく?ぼくはちゃんと役があるよ」
侑「じゃあなんだよ!」
弥「それはね」

と丸めていた雑誌を広げた。
そこには黒の油性ペンで大きく『そうかんとく』と平仮名で書かれていた。

椿「ああーー!!!!!」

今度は椿が大きな声を出した。

梓「椿?どうしたの?」
椿「俺の…俺の…雑誌……」
梓「雑誌?」
弥「あ、これね!この前つっくんのお部屋に入ったとき見つけたの!だって『そうかんとく』ってよく台本をこうやって丸めてるよね!それを真似してみたの!」
椿「わ〜た〜る〜!!」

今にも椿が弥に掴みかかりそうだったので梓と棗が彼を取り押さえる。

椿「その雑誌の…表紙、俺好みの妹系の女の子だったから大事にとっておいてたのに…」
梓「まあまあ」
棗「つかあの雑誌の表紙のやつ、絵麻に似ていないか?」
絵「え?私?」
椿「なつめええええええええええ!!!!!!!!!!!」

椿は慌てて棗の口を塞ぎ、絵麻に

椿「なんでもないよ☆」

と笑顔を向けるとこっそり棗に耳打ちをする。

椿「お前何言ってるんだよ」
棗「はあ?何が?」
椿「いいから雑誌のことは忘れろ。いいな!」
棗「あ、うん、分かったよ」

そうして事は本題へ入ろうとしたのだが、みな侑介の役のことをすっかり忘れており、

侑「おいいいい!!!!だから俺の役は!!!!」
弥「あ、そうだった」

そして弥は白雪姫の役に漏れはないか確認し始めたが、

弥「うーん、ないなあ…」
侑「はあ!?」
弥「うん、ごめんね」
侑「いやいやいや!!もう面倒だから小人とかに入れてくれよ!!」
弥「でも白雪姫の小人は7人だよ?8人じゃないよ。だからだめ!」
侑「そんなあ!」
弥「じゃあ…」

弥は苦しげに考え、出した案は…

弥「お馬さん!」
侑「は?」
弥「だからゆーくんはお馬さんの役!」
侑「いやそれは分かったけどなんで馬が出てくるんだよ!白雪姫に馬なんて出てこないだろ!」
弥「え!出てくるよ!白雪姫の最後、王子様がお馬さんに乗ってくるじゃん!」
侑「はあ!?」
祈「それはいい考えだね、弥」
侑「おい祈織!」
弥「そうとなればやろー!」
侑「おい!みんな俺の話を聞けええええ!!!!!」

結局誰も侑介の話を聞くことはなく、各々与えられた役の準備に取り掛かった。
絵麻も弥に言われた通りワンピースを着ており、

絵「弥ちゃん、いつでも始められるよ!」

と人一倍やる気があった。
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