チェシャネコの悪戯

□約束の季節
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またこの季節が来たんだね。

君と初めて出会って。

君と最後のキスをした季節。

初めて会ったあの日。

公園でお喋りして。

照れ臭そうにキスをしたね。

君が私をからかってることなんて分かってたよ。

だけど、君のはにかんだ笑顔には勝てなかったみたい。





あれからもう二年が経って。






最後にデートしたあの日。
いつもなら車から降りるときにキスして

『またね』

って私の大好きなあの顔で囁くのに

その日のキスは唇の感触を確かめるような。

長い長いキスで。

まるで名残を惜しむようだったね。

そして君はいつものように『またね』と言ったね。

私がみたことのない、悲しそうな目で微笑んで。

分かってるよ。

もう最後なんだよね。

でも、私と交した約束が叶わなくなることを、この時だけは気付かないようにしてくれてるんだよね?

でもね、私もそこまで子どもじゃないんだよ。

だから…‥

ちゃんと言ってよ。












またこの季節が来て。

君と通ったこの道を歩みながら思うんだ。

『いつか言葉を聞かせて』

あのとき聞けなかった「さよなら」を。

『その心まで声を届けて』

私から君への愛しているという気持ちを。

『離れていても二人の季節はそこにあるから』

約束するよ…‥君と歩こう。
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