短編

□拍手log
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長編IF 任命されたのがしのぶさんだったなら
※大分シリアスで気まずい話です



「・・・」
「・・・」
「あ、あの・・・?」

世話係のちづさんがおろおろと私とお館様の古い知己、カナエ姉さんが慕っていたという女性を交互に見る。
それは当然だ。部屋に入るなり、お互い無言でピリピリとした空気で見つめあって、その中に巻き込まれているちづさんには申し訳なく思う。
でもその人は、ふと無性に夜中に姉さんのお墓に行きたくなった日、姉さんの墓前で手を合わせていた鬼の女性だったのだから。
なんの嫌がらせだ、よりによって鬼に殺された姉さんに鬼が墓参りの真似事か、と怒りのままその女を刺した。
逃げられてしまったけど、毒を打ち込んだのだから何処かで衰弱して死んだに違いないと思っていた矢先に、お館様からの命で姉さんが遣いとして訪れていた人の所へ定期的に伺う任務を引き継ぐことになった。
姉さんはいつもその人のことをべた褒めしていて、いつか私も会いたいと思っていて、今日ここに来るまでは姉さんとの思い出話をできるかもしれないと思っていた。
なのに現れたのは、あの日私が刺した鬼。
私の毒に侵され、死者のような顔色の悪さで、気まずげに私を赤い瞳で見ている。

「よく来てくれた・・・カナエには本当に世話になった・・・その妹のお前が来てくれるのは本当に嬉しい・・・」
「姉も・・・あなたに本当によくしてもらったと言っていました」

本当に、姉さんのことをこの人は可愛いがっていた。鬼でありながら人の心を失くさず、何百年も鬼殺隊を助けてきた、本来ならばお館様と同等かそれに次ぐ位置にいるべきひと。
姉さんの死を心から悲しみ悼んでくれていたこの女性を有無を言わさず刺してしまったことへの申し訳なさと、だからこそこの女性がいた所為で、姉さんは最後まで鬼への優しさを捨ててくれなかったのだという、逆恨みが私の中でぐちゃぐちゃと渦巻いた。






このあと、解毒剤をもらったので本編よりかなり早く元気になりますが、大分気まずい思いをお互い長々とし続けます。
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