短編

□青空の下笑う人
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「ひなちゃん、ちかちゃん。何して遊びたい」
「「お屋敷の屋根の上に連れてってくださいナシ様」」
「お安い御用」

眩しい笑顔で私達の頭を撫でて下さる鳥柱のナシナナシ様。
柱に就任する前から、お忙しいのに私達とよく遊んでくださる優しい人。
鳥の呼吸の使い手なだけあって、まるで烏天狗みたいに木の上や屋根に跳び上るナシ様は、私達を軽々と抱えてとても高い木の上や、五重の塔の形をしている鳥屋敷の天辺に連れていってくれる。
どこもでも広がる青空の下の街を見せてくださった。
宝石箱をひっくり返したような、満天の星空を見せてもらえた。

「二人とも怖くない?」
「「大丈夫です」」
「お、さすがお館様のご息女。肝据わってんな。よきかなよきかな」

強がりでもなんでもなく、本当にしっかりと私達をナシ様が抱えてくださるから、ちっとも怖くなんかなかったし、ナシ様は色んな声が出せて、色んな鳥の鳴き声を真似できるから、ふわふわ可愛い雀が沢山集まってきたり、爪が大きく鋭い目の隼を腕に止まらせて触らせてくれた。

「では恒例となりました、“柱の面子でホニャララはこんなこと言わない物真似”の始まり始まりー!」
「「わーい」」
「では早速、ぎゅっさんこと水柱・冨岡義勇で・・・」
「テメェナシ!!ご息女様達なんて場所に置いてやがんだァッ!?」
「やっべ!さねみちゃんだ!ひなちゃんちかちゃんしっかり掴まってな!」
「「はい」」

屋根から飛び降りると、不死川様の怒声と悲鳴が混じった声が響いて、ちょっと面白かった。
空中でナシ様が私達を抱えたまま屋根から屋根を下りて、宙返りして、ぐるぐる回りながら景色が落ちていく。
とんっ、て地面に着地したと思ったら、間髪入れず凄い速さでナシ様が走り出した。
さっきまで落ちていく景色は、今度は後ろに川のように流れていく程速くて、低空飛行するツバメはこんな景色を見ているのかな?って思うと心からわくわくした。

「テメェナシまてゴルァ!!」
「またねーよ!まったらさねみちゃんぜってー俺のこと殴んべ!?」
「たりめぇだァッ!ご息女様方怪我したらどう責任取りやがるテメェ!」
「させるわけねぇだろ!つか、今この状態で俺に攻撃してみろ!ひなちゃんとちかちゃんまで巻き添え食うぞ!」
「お二人を下ろしたとこで殴るに決まってんだろうがァッ!」
「おまわりさーん!ここに男前と幼女二人に迫ってくるチンピラがいます!無駄に大胸筋を見せつけてくるスケベなチンピラです!」
「ぶっ殺す!!」

お二人の掛け合いが面白くて、くすくす笑っているうちに、屋敷に戻ってきた。
縁側におろしてもらった途端に、不死川様がナシ様をお膝で蹴ろうとしたけど、ナシ様はそれを腕で受け止めて、お二人の組手が始まった。
息つく間もない応酬に見惚れていると、お母様に手を引かれてお父様が現れた。

「今日もナナシと実弥の二人は元気だね」
「「お館様」」

今日の原因は何かな?と、聞かれたので正直にお話した。

「ひなき、にちか。楽しかったかい?二人とも」
「「とっても」」
「そう、よかったね。じゃあ二人とも、そろそろ実弥を止めてあげなさい」
「「はい」」
「不死川様、もうおやめください」
「鳥屋敷の屋根に連れてってと頼んだのは私達です」
「「ナシ様をいじめないで」」
「い、いじめてません!それに頼まれたからとお二人を危険な場所に連れていくのが問題なのです」
「まぁまぁ、実弥。もうその辺にしてあげなさい。ナナシもあまり実弥をからかってはいけないよ」
「承知致しましたお館様」

この後、ナシ様はお仕事が入って不死川様と一緒に行ってしまったけど、去り際にお土産を買ってきてくださると言った。
その時、ナシ様に輝利哉が帰ってきたら自分も鳥屋敷の屋根の上に連れてって、とこっそり頼んでいた。
ナシ様はいたずらっ子みたいに笑って小声でわかった、って言ってらした。くいなとかなたが私達も、って寄って行って、お父様も私も久しぶりに行きたい、と言ってたのがおかしくてお母様も笑ってた。

「内緒っすよー?」

しーっ、て人差し指を口の前で立てるナシ様の真似をして、私達も人差し指を口の前で立てた。
私達はナシ様が大好きなの。

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