wonder Alice.
□20 待ち人
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▼フィンクス
「はあ!? ヒナタいねーのかよ!」
「ええ、そうよ。知らなかったの?」
「知らねえよ! なんで、またクロロに仕事でも任されたのか?」
せっかくあいつに似合いそうな服やら、装飾品やらをかっぱらってきてやったのに、当の本人がいないんじゃ意味が無い。
嘘だろ、と目の前ですましているパクノダを問いただしちまう。
パクノダは呆れるような目で俺を見て、何やら携帯を弄りだした。
「はい」
「お、おう?
なんだ、あいつからのメールじゃねえか。……ああ? ハンター試験だあ!?」
「本当に何も聞いてないのね、あの子ったらフィンクスのことを忘れてたのね」
ぐさっ、とパクノダの言葉のナイフが胸に突き刺さる。何もそんなはっきり言わなくてもいいだろうが。
つうかヒナタもヒナタだろう。なんで俺のことを忘れちまうんだよ。
メールだって何通か送ったっていうのによ……一通も返ってきやしねえ。くそ。
「シャルが言うにはもうすぐで終わるそうだから、フィンクスも一緒に迎えに行ったらどう?」
「いや、行きてえけどよ。行くけどよ」
「その時に、あなたの後ろにある大量の貢物を、合格祝いだって渡せばいいじゃない。
きっと喜ぶわよ」
ヒナタに渡そうと思っていたものを見やる。
確かにいつまでも拗ねてても仕方ねえ。
あいつがハンター試験なんて意外だったが、絶対合格して帰ってくるはずだ。普通に渡すよりも、そのお祝いだって渡したほうが喜ぶに決まってる。そうだ、そのほうがいいじゃねえか!
さっきまでの燻ってた気持ちが一気に晴れていくのを感じた。
「じゃあこれだけじゃちっと少ねえよな。パク、おめえもあいつに何かやるんだろ? 一緒に行こうぜ、んであいつの好きなの教えてくれや」
「いいけど、荷物持ちは任せたわよ」
「へいへい。
そういやあ、ヒナタがいねえってことは、フェイのやつぜってー機嫌悪いよな」
「最悪よ」
今頃いつもの三倍凶悪な面でヒナタの帰りを待っているだろう。
その姿を想像するとなんだか笑えてくる。あとでからかいに行ってやるか。
「ヒナタのやつ、元気にしてっかな」
「元気よ。もしあの子に何かあったらヒソカは私が殺すわ」
「おお、恐ろしいな。……て、ヒソカの野郎も一緒なのか!」
「あら、言ってなかったかしら?」
「聞いてねえよ! 嘘だろ、大丈夫なのかよ」
あのいけ好かねえイかれた男を思い出して、身震いする。
ヒソカ、ヒソカだって! あんな野郎と一緒でヒナタが無事なわけがない。
あいつに手を出したら、俺だってあの男を生かしておくわけにはいかねえ。
「そんなに慌てなくても大丈夫よ」
「んなこと分かんねえだろ!」
「ヒナタのことだから、今頃ヒソカと友達にでもなってるんじゃないかしら」
「友達ぃ!?」
「ふふ、あの子にはそんな魅力がある、フィンクスも知ってるでしょう」
……そう言われて黙ってしまう。
あいつの側がなんでか居心地いいのは知ってる。それにみんなふらふらっと寄ってちまうのも分かる。
それが少し面白くねえっていうのも……。
「早く迎えに行こうぜ」
「ええ、とびきりのプレゼントを用意してね」
「おう」
そんでまたあいつの料理を腹いっぱい食ってやる。
だから、頑張れよ、ヒナタ。
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