wonder Alice.

□23 自覚
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 球根。
 あ、違う違う求婚だ。私は今求婚されているんだ。え、キュウコン? 違うか! あはははは! なんて笑ってる場合じゃないだろーがー!
 心の中の壮大なノリツッコミはかなりの顰蹙ものだった。ダメだ。深く考えたら負けどころか、思考を一切捨てないと色んなものを失いそうだ。
 そもそもなんでイルミが私なんかにプロポーズする必要がある?
 正直私なんか(二回目)にそこまでの価値があるとも思えないし、私なんか(三回目)と結婚するメリットなんて正直ない。むしろ私なんか(四回目)が嫁になったらゾルディック終わるぞ! ほんとだよ!
 あ、でもイルミと結婚したらキルアくんのお姉さんになれるのかな。うん、ちょっと心が揺れるな。キルアくんに「お姉ちゃん」とか「姉さん」とか「姉上」とか、あれ、これはちょっと違うな。
 とにかく、もしかしてこれって敵の念能力による攻撃だったりするのかな。NARUTOで言うところの幻術だったりするのかな。だったら理解できる(できません)。

「ヒナタ」
「ふへぇい!」
「それはOKって意味だよね。そうだよね。俺と結婚するってことだよね。はい、けってー、今更撤回とか受け付けてません」
「待て待て! ほんと待って! 強引にもほどがあるよ、それ!」

 何故強制ウェディングイベントなんだ。
 そんなフラグもイベントも身に覚えがないよ。好感度表見せろ、いつのまにカンストしてんだ。嘘つけ。何か裏があるんだろう? そうなんだろう? 隠したって無駄さ。
 あ、分かったぞ、クロロの嫌がらせだな。金に物を言わせてイルミに無理やりやらせてるんだろう。何のため? 知るか、そんなのクロロに聞けや。
 あー危なかった。危うくクロロに騙されるところだったぜ、間一髪☆

「俺と結婚したくないの」
「いえ、それよりもなんでいきなり結婚なんですか。ガチで訳が分かんないんですけど」
「俺がヒナタと結婚したいと思ったから」
「ホワイ!」
「どうどう。さっきも言ったけど、誰かに取られる前に俺のモノってことにしたいんだ。だからヒナタは「はい」とか「イエス」とか「OK!」とかなんかそんなこと言ってにこにこしてればいいよ」
「納得できなさすぎてどうでもよくなってきた!」

 どうしようツッコミが足りない。
 私はボケ要員なのでツッコミには向いてないのでせう。誰かー誰かー、キルアくーんは無理か。じゃあゴンくーんを巻き込むのは大人としてどうなんだ。ならばヒソカか……ダメだな、自体が悪化するだけだ。
 あれ、もしかして逃げ道がない? 嘘だー。そんなことないよー。
 よし、この場は適当にお茶を濁して先延ばしにしちゃえ。そうすればイルミも落ち着いて、私に求婚なんて馬鹿げたことだって思い直すに違いない。アタイって天才ね!

「と、とりあえずこれは私の一存では決められないので団長に一度確認を取ります」
「クロロはヒナタがOKすればいいよって」
「(クソプリン信者が)ふぇ、フェイタンがいいよって言わなきゃダメなんです! な、なぜならフェイタンは私のパパンであり、私の保護者だからなのです!」

 もう何を言っているのか分かりません。口から出まかせ、というよりは思いつくままに吐き出しているだけな状況だ。

「ねえ、そのフェイタンってヒナタの何」
「へ」
「俺はヒナタに聞いてるの。俺と結婚したいの? したくないの? ヒナタはどう思ってるの」
「私、は……」

 愛なんて知らないよ――だから愛を求めて、この世界の素敵な人たちを求めて、この世界に来た。
 だからこの申し入れを受け入れるのは、もしかしたら当然のことなのかもしれない。まだ愛は知らないけれど、これが愛の始まりなのかもしれない。
 でも、でも、脳裏に浮かぶのはいつもの真っ黒な私の王子様なんだ。
 もうとっくに、私は愛を……。

「ごめん、いいよ。今の嘘、なかったことにしていいから」
「……」
「泣かしたかった訳じゃないんだ。ただ、俺を選んで欲しかっただけなんだ」
「ごめ、なさ……」
「いいよ。もういいから。いいんだ。本当に、いいんだよ」

 好きなの、フェイタンが凄く好きなの。
 ずっと前から好きだったけど、そんなのただの萌えと混合したいつも通りの勘違いのミーハー精神だと思ってた。真実の愛じゃない。また私はひとりで暴走して、ひとりで先走って、そして愛を見失って終わるんだって、思ってた。

「私、フェイタンが好き、なんです」
「……」
「ふは、好きとか、恥ずかし」
「そっか――でも俺は諦めないからね」
「は」

「俺もヒナタが好きだから、諦めない。今は泣かせちゃうから我慢するけど、ちゃんと俺のことも考えていて欲しい」

 だから覚悟していて、そう言ってイルミは私の頬にキスをした。繰り返す、私の頬にキスをした。繰り返す、キスをした。繰り返す、キス。キスぅ!!
 ばばっと、ほっぺを手で押さえる頃にはイルミは離れていた。でもほんのりと唇の感触が残っていて、身悶え! 悶え! なんつう破壊力だジョニー! 危うく心ごと奪われちまうとこだったぜ!
 でも、ほんの少しだけ見えたイルミの表情は、なんだかいつもより悲しそうで私の心はほんのり傷ついた。
 だというのにその一方で――イルミみたいなイケメンをふる日が来るなんて! と、はしゃぐ自分がいるのも真実だったり。


 というか、これ、このあと私どうしたらいいんですかねえ!(迫真)







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