wonder Alice.
□06 食事
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::シャルナーク
フェイタンが連れてきた女が、ここに顔を出すようになってもう何ヶ月も経つ。
随分溶け込んでいるみたいで、フェイタンはもちろん、マチやパク、フィンまで気をかけてやっている。
そりゃあね、顔は良いと思うよ。俺の勘がそう告げている。
でもフェイタンたちの様子を見る限り、どうも顔だけとは思えないんだよね。
「フィンー、今日は私のお手製ミートソースを使ったミートドリアだよ!」
「おおッ! すっげえ美味そうじゃねえか」
「でしょう、自信作なのだ! ポタージュも作ったからどうぞ召し上がれ〜」
料理の腕はめきめき上達している。
料理だけじゃなくて、戦闘の方面でも随分伸び代が良いそうだ。フェイタンの機嫌が良い事からそう読み取れる。
しっかし、なんで俺も呼んでくれないかな。フィンクスだけなんてちょっとヒドイと思う。
恨みがましく見ていると、俺に気がついたのか、手振りでこいこいされる。
「シャルナークさんもいかがですか? たっくさん作ったので、良かったら召し上がってください」
そんでなんで俺だけいまだにさん付けで敬語なんだ。ノブナガにウボーすら呼び捨てのタメ口なのにさあ。
俺のほうが付き合い長いのに可笑しいだろう。
「いいの? ありがとう」
机に並べられた料理に笑顔でお礼を言う。食欲をそそる匂いがする。
フィンは既におかわりを要求している。もう少し味わって食べられないものだろうか。
まず一口、口に運ぶ。
自信満々にしていただけあって美味い。食事と言えばもっぱら外食なので、身近な人間の料理を食べるのは久しぶりだ。
「美味しいよ、ヒナタって料理上手なんだね。俺惚れちゃいそうだよ」
「おい、嫁にもらうのは俺だからなッ。毎日食っても飽きないぜ!」
「嬉しいこと言ってくれるねえフィンー、よーしデザートも用意してあるからいっぱい食べてねー」
俺、無視?
ついつい固まる笑顔を解しながらもう一口食べる。
俺もだけど、この女がきてから団員がよくホームに集まるようになった。
仕事以外ではあまり集まらない俺たちなのに、マチやパクはほとんどをホームで過ごしている。フェイはもともと家が近い事もあるけど、頻度は増している。
もっとムカツクかと思ったのに、不思議なくらい落ち着いている。
「あのシャルナークさん、まだ余裕がありましたらデザートもどうぞ。さっぱりしますよ」
そう言って出されたのは、綺麗な器に盛られた涼しげなシャーベットだった。
「レモン風味のシャーベットです。あ、お皿下げますね」
隠れた口元を残念に思うほどだ。
きっとその下に極上の笑顔が隠されているだろうに。ここにいないフェイタンを恨んでしまう。
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