wonder Alice.

□07 バレンタイン
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「あらヒナタ、いい物を作っているわね」
「パク!」

 チョコを湯銭で溶かしているところに、パクが台所にやってきた。今日も美しさは格別だ。

「もしかしてバレンタインのチョコかしら」
「うんそうなの。あ、パクとマチにはもちろんあげるからね! 本命で!」
「ふふ、嬉しいわヒナタ。それじゃあ私はホワイトデーに三倍返ししないといけないわね」

 パクの大きな手で優しく頭を撫でられる。気持ちよくてはにゃ〜んとしてしまうが、慌てて気を引き締める。
 ハンターの世界にもバレンタインという概念はあるらしく、聞くに聞けなかった私はほっと息を吐いた。
 日頃の感謝を込めてみんなに渡そうと思ってはいるが、そう都合よく人が集まるとは思えない。
 まあ会えた人にだけ渡せばいいよね、ぐらいの軽い気持ちだ。

「なにか手伝いましょうか?」
「ううん、私の手で作りたいの、ごめんね」
「いいのよ。楽しみにしてるわねヒナタ」

 無駄のない美しい動きでパクは台所を出て行った。行動の一つ一つが映画のようだ。
 ついついその姿に見惚れてしまう。集中力の無さは修行を重ねても変わらなかった。筋金入りだ。
 そこまで手の込んだ物は作れないが、手を抜くのもイヤだった。
 とりあえずレシピを覚えているものはいくつかあるが、私はその中でフォンダンショコラをチョイスした。
 今はバターとチョコを一緒に溶かし終えたところだ。

「ヒナタそれってバレンタインのチョコだよね」
「ひぅ――――ッ」
「嬉しいなあ。もちろん俺にだよね?」
「シャル、ビックリして零しちゃったらどうするのっ」

 近頃やっと打ち解けてきたシャルナークに噛み付くように言う。

「まあまあ。で、俺だよね?」
「シャルにももちろんあげるけど、みんなにもあげるものだからね」

 そう言えば見るからに不満そうな顔をされる。
 そんな顔をされたって、みんなにお世話になっているのだから、こういうことでお返ししないとダメだろう。
 私も唇を尖らせて不満を訴えてみる。





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