wonder Alice.

□10 迷子
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「迷子ったあーーーーーっ!!」



 ここはどこ、陸地ということしか分かりません、フェイタン助けて! 地面に跪いて許しを請えばいいですか、舐めましょうか、土を!
 一人でエキサイティングしている私は、周りの視線など微塵も配慮する余裕はなかった。

 初めから無理だったんだ。だって私は方向音痴、迷子の達人、右に行っては左に迷い、左に行っては右に迷い、目的地を求めては迷子センターへ誘われる。



 なんでこうなった!



 出かけるまでは平穏だったのに、平和だったのに……えーん。





***




 ギリのギリまでフェイタンは私を拘束し続けた。物理的拘束力は皆無だったが、あんまりにもあんまりな目で見られると、私の体は拘束されたも同然だ。

 仕方なく、私は最後の荷物チェックを何回も続けた。ティッシュよーし、ハンカチよーし、携帯よーし、財布よーし、フェイタンの針よーし……。
 確認する間もフェイタンの視線が痛いほど背中に刺さる。あだっあだっ。



「ヒナタ、私を置いていくこと、絶対後悔するよ」
「……やだー、不吉ー、うふふー」
「私、ヒナタがいない間遊び放題ね、帰って来たときにびくりするよ」
「なににビックリするんだろー、えー、分かんないー」


 なんでこんなにグチグチと文句を言われ続けているんだろう。おかしいな、ほんの少し前はOKな雰囲気だったのになあ。

 椅子にちょこんと座って、私を睨むフェイタンは正直可愛い。
 室内着に着替えているので、いつもは隠れている顔も外気に晒されている。それは私も同じなんだけど、フェイタンのような意外性はない。

 そのせいで私は上手くフェイタンのほうを見れないでいる。可愛さは罪、醜さは罰ね!(意味分からん)


「ヒナタ、絶対に顔出すダメよ」
「……蒸れるんだよ、これ」


 今は顔を隠すと言っても、外出の時だけで、普段は家の中では開放感に溢れている。

 それを四六時中他人に囲まれているハンター試験でも貫けと? イヤだ。ぜってーやだ。むしろ私は、顔を隠す必要性を少しずつ疑いだしてる。


 当初は自分の醜さが悪いんだ、と、甘んじて受け入れてきたけど、正直私そこまで酷くないよね。中の下くらいだよね。
 顔を布で覆うという、いまだかつて味わったことのない弊害に私は反抗的になりつつある。


 忍者じゃないんだからいいじゃん、とフェイタンをジト目で見ることで訴えてみる。


「私の服着てくといいよ。顔隠れる。闇紛れる。返り血目立たない。良いこと尽くめね」
「おおふ」
「? 変な声だしてどうしたね」

「んー、フェイタンはなんで私に顔を隠して欲しいの? 今までは納得してたけど、よくよく思えば、私の顔ってそこまで酷くないよね」

「醜いあるわけないよ、ヒナタはめちゃ可愛いね」



 あの、フェイタンが“めちゃ”とか言っちゃだめじゃないかな。


 しかもその可愛いってのは、親や兄が下の子を可愛いっていうのと同じレベルに感じる。親の欲目……って、フェイタンってマジで私のパパなの!?


「と、とにかく、めちゃ可愛いならなんで顔を隠さないとダメなの?」
「可愛いからダメ」
「えー……フェイタンと話がかみ合っていない」


 そんなに可愛い可愛い言わないで、惚れてまうやろー! もう手遅れだけどさー!










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