wonder Alice.

□11 到着
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 ジューシーな肉の焼ける音と匂いに、既に私は当初の目的を見失いかけている。よし、食べごろ。
 シャルのおかげで、なんとか私はこうして会場に辿り着く事が出来た。お礼について何か言われた気がしたけど、恐らく気のせいだろう。気のせい気のせい。
 ああ、それにしても試験を受けに来てお肉が食べれるなんて、し・あ・わ・せ……おかわりはダメだよねえ。
 そのまま堪能していると、チーンという音ともに、どうやら下に到着したようだ。

「さってと、いっちょ頑張りますか!」


 ――――ごめんなさい、帰ります、帰らせてくださいッ!





 試験会場は異様な熱気に包まれていた。当然の如く会場の男女比は偏っている。
 顔を隠しているとはいえ、パンツルックとはいえ、見た目は女性の私は酷く衆目を集めてしまう。見るな、穢れる、本気で。
 イケメンがいない、だ、と……いや、分かっていたけどね。分かっていましたけどね。それでもショックを受けてしまうのは仕方がない。
 せめてイルミが顔を隠していなければ、もう少しマシだっただろうに、残念過ぎる。

「こちら322番のプレートです」
「あ、どうも」

 てっきりゴンくんたちより遅れたと思ったけど、ちょっと本気出して走りすぎちゃったみたい。念を使えば一応水の上だって走れるのだ。えっへん。
 と、いうことは会場にヒソカがいるんだよなあ。会いたくないなあ。
 人の群れから離れるように壁際に逃げ込む。すると、それにあわせるように動く一つの影が見えた。まあ、おおよその見当はついている。
 辛辣な言葉になってしまうけれど、自分の事を棚上げもいいところだけれど、私って、男の不細工が嫌いなんだよね。あ、見た目というよりは心かな、顔も心も不細工だ何て、救いようがないよね。

「だからあっち行って欲しいなあ、私ってシャイだから、そういうのって上手く伝えられないしなあ、空気読んで消えてくれないかなあ」
「……お嬢さん、全部声に出てるんだけど」
「あ、ごめんなさい。私ってすっごく素直だから、つい」
「はは、いいよいいよ。いきなりこんなおじさんが近づいてきたら困っちゃうよな。俺はトンパ、このハンター試験を長いこと受けている、ま、ベテランだな」

 人好きのしやすい笑みは、前の世界にいた頃の私なら簡単に騙せた事だろう。でも今は違う、目の動き、表情の微妙な変化、声色、これだけでだいたいの感情は読み取れる。
 なんて分かりやすい人だこと、あしらうのも面倒だし、適当に合わせてお引取り願おう。

「あの私――――」
「彼女はボクの連れだよ、何か用かな」









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