狩人

□シニカミサマ
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 カミサマはいないって、私はヒソカから教えてもらった。

 私が一人ぼっちなのも、搾取される家畜なのも、よわっちくてゴミなのも、全部全部カミサマのせいなんだよって、ヒソカは私に教えてくれた。

 だってカミサマがいたら、今頃私はお布団の中で、明日の心配なんてせずに、ただぬくぬくと丸まっているはずだって、なるほど確かにそうだ。

 こうやって毎日ゴミ箱に頭を突っ込む必要も無くて、道行く人に存在無視をされることも無くて、家族と手をつないで歩いているはずだって、ヒソカは言った。



 ヒソカは私にいろんなことを教えてくれた。


 カミサマがいないのなら、どうして私以外の人間が幸せなのか、それはみんなが私の幸せを奪っているからなんだって、ビックリした。

 私の知らない誰かが、私の幸せを奪うなんて、そんなヒドイ話はもしかしたら聞かなかったほうが良かったかも知れない。

 でも聞いてしまった私は、ただ汚い頬を洗うように涙を流した。

 私の分まで幸せを感じる見知らぬ誰かが、堪らなく憎く感じた。今まで何にも不思議に思わなかった、バカで哀れな自分も憎くなった。


 なのにヒソカは笑っていた。


 良かったね、君が不幸な理由を知れて、良かったねって笑った。私は何が良いのかさっぱり分からなかった。でもヒソカは賢い人だから、きっと私は良かったんだ。




 だから私も笑った。



「ありがとう、ヒソカ」




 私にいろんな事を教えてくれて、私のために『良かった』って笑ってくれて、本当に――――ありがとう。





 瞬間、ヒソカは私の胸を腕で貫いた。赤い血が、私の体と、ヒソカの腕の隙間から溢れてきた。痛みは不思議と無かった。

 ヒソカはずっと笑いながら、カミサマはいないって言った。


 でも私はなんだかヒソカがカミサマに見えた。











「変な子だったなあ。くく、僕の話をあんなに真剣に聞いてくれる子って、なかなかいないんだけどねえ」



 惜しかったかな――――ヒソカは腕についた血を美味しそうに舐め取った。

 死体になった少女の頬には涙の跡が残ったが、その表情は笑んでいた。










→読まなくても良いあとがき
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