ゴーストハント

□第三章
1ページ/3ページ

霊能者同士の険悪なムードに包まれた。

巫女さんとぼーさんは口喧嘩を始め、ナルは我関せずという感じでパソコンを弄っている。

呆れ返っている彰に、やれやれと肩を竦める麻衣。
ふ、と麻衣はグランドの方へ眼をやったら、制服姿の女の子─黒田女史─がこちらに近いてくるところだった。

確かに今朝、彼女は旧校舎に来たそうにしていた。

「あたしにはあなたと違って霊能力があるから、渋谷さんの役にたてるかも」と、友達でもないくせに麻衣に失礼なことを言っていた。のを俺は見ていた。

余談だが、俺はクラスの連中と会話らしい会話をしたことがないので、友達はいない。

まぁ、ほしいとも思わないが。

話しを元に戻すと、麻衣は、ナルが嫌がるだろうし、なにより危険があるだろうから止めたほうがいいと言っていたが、言われた本人は聞く耳持たず。

結局、本当に来た。

「谷山さん」

麻衣に向かって、女史は軽く手を上げる。

妙に愛想の良い声だ。

黒田女史はいかにも親しげに寄って来て、車とナルを見、そして未だに言い合いをしている巫女さんとぼーさんを見比べた。

「この人たちは?」

「言う必要ある?」

十中八九麻衣に尋ねただろう質問を、彰が冷たく切り捨てた。

「教えてくれたっていいじゃない。別に秘密ってわけじゃないんでしょ?」

「旧校舎を調査しに来た人たち。巫女さんとお坊さんだって」

二人の間に流れる不穏な空気を感じ取り、麻衣が先程の質問に答えた。

「ああ、良かった……!旧校舎は悪い霊の巣で、あたし、困っていたんです」

巫女さんもぼーさんも口を噤んで女史を振り返る。

巫女さんがいかにも胡散臭いものを見るような眼を女史に向けた。

「あんたが……どうしたんですって?」

「あたし霊感が強いんです。旧校舎に溜まった霊の影響をもろに受けてしまって、始終頭痛はするし、大変で」

「自己顕示欲」

巫女さんはあっさり言った。

「あんた、そんなに目立ちたいの?」

黒田女史は思わず怯んだ。

お人好しな麻衣がそこで口を挟む。

「そういう言い方はないでしょ」

「なんで?本当のことよ。その子に霊感なんてないもの」

「どうしてそう言い切れるんですか」

「見れば分かるもの。その子はただ、自分が注目を浴びたいだけ」

黒田女史の顔から表情が消えた。

「…あたしは霊感が強いの。霊を呼んであなたに憑けてあげるわ」

能面のように強張った顔に薄く笑みを浮かべた。

「…本当に強いんだからね……」

黒田女史の眼は完全に据わっている。

「…偽巫女。今に後悔するわ」

ぞっとするような笑みを浮かべた黒田女史を、巫女さんは睨み返す。

「楽しみにしてるわ」

女史は踵を返し、グランドのほうへと駆けて行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ