ゴーストハント
□第三章
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霊能者同士の険悪なムードに包まれた。
巫女さんとぼーさんは口喧嘩を始め、ナルは我関せずという感じでパソコンを弄っている。
呆れ返っている彰に、やれやれと肩を竦める麻衣。
ふ、と麻衣はグランドの方へ眼をやったら、制服姿の女の子─黒田女史─がこちらに近いてくるところだった。
確かに今朝、彼女は旧校舎に来たそうにしていた。
「あたしにはあなたと違って霊能力があるから、渋谷さんの役にたてるかも」と、友達でもないくせに麻衣に失礼なことを言っていた。のを俺は見ていた。
余談だが、俺はクラスの連中と会話らしい会話をしたことがないので、友達はいない。
まぁ、ほしいとも思わないが。
話しを元に戻すと、麻衣は、ナルが嫌がるだろうし、なにより危険があるだろうから止めたほうがいいと言っていたが、言われた本人は聞く耳持たず。
結局、本当に来た。
「谷山さん」
麻衣に向かって、女史は軽く手を上げる。
妙に愛想の良い声だ。
黒田女史はいかにも親しげに寄って来て、車とナルを見、そして未だに言い合いをしている巫女さんとぼーさんを見比べた。
「この人たちは?」
「言う必要ある?」
十中八九麻衣に尋ねただろう質問を、彰が冷たく切り捨てた。
「教えてくれたっていいじゃない。別に秘密ってわけじゃないんでしょ?」
「旧校舎を調査しに来た人たち。巫女さんとお坊さんだって」
二人の間に流れる不穏な空気を感じ取り、麻衣が先程の質問に答えた。
「ああ、良かった……!旧校舎は悪い霊の巣で、あたし、困っていたんです」
巫女さんもぼーさんも口を噤んで女史を振り返る。
巫女さんがいかにも胡散臭いものを見るような眼を女史に向けた。
「あんたが……どうしたんですって?」
「あたし霊感が強いんです。旧校舎に溜まった霊の影響をもろに受けてしまって、始終頭痛はするし、大変で」
「自己顕示欲」
巫女さんはあっさり言った。
「あんた、そんなに目立ちたいの?」
黒田女史は思わず怯んだ。
お人好しな麻衣がそこで口を挟む。
「そういう言い方はないでしょ」
「なんで?本当のことよ。その子に霊感なんてないもの」
「どうしてそう言い切れるんですか」
「見れば分かるもの。その子はただ、自分が注目を浴びたいだけ」
黒田女史の顔から表情が消えた。
「…あたしは霊感が強いの。霊を呼んであなたに憑けてあげるわ」
能面のように強張った顔に薄く笑みを浮かべた。
「…本当に強いんだからね……」
黒田女史の眼は完全に据わっている。
「…偽巫女。今に後悔するわ」
ぞっとするような笑みを浮かべた黒田女史を、巫女さんは睨み返す。
「楽しみにしてるわ」
女史は踵を返し、グランドのほうへと駆けて行った。