ゴーストハント
□第四章
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ナルが旧校舎に向かうと、全員なぜだか、ぞろぞろとついて来た。
教室では機材が自動的に作業を続けている。
無機的な音で満ちていた。
ぼーさんも巫女さんも立派な機材を見たとたん、嫌味が始まった。
「あなた方は、旧校舎の除霊に来たのでは?それとも遊びに来たんですか?」
嫌味を嫌味で返された二人は、気分的を害して出て行った。
「君は?」
ナルはブラウンさんに眼をやる。
ブラウンさんは困った様子だ。
「わて─僕、こういう雰囲気は、かなんのです。僕はできるだけ協力させてもらいますよって、ここにいてもよろしやろか」
「どうぞ」
素っ気なく言って、ナルはコンピューターに向かう。
キーボードを叩くと、棚に収めて積み上げた十個近くはある小型テレビの画面が変わった。
至るところに設置したカメラが旧校舎の様子を捉えている。
ふ、と気になるものを発見した。
「これ、もしかしてサーモグラフィー?」
俺が青や黄色の斑模様の画面を指差しながら訊ねると、「そうだ」という短い返事がかえってきた。
「サーモグラフィーって、温度を映像にするやつ?」
「そうだよ。こういう黄色ところは温度が高くて、反対に青っぽいところは低いんだ」
「ふうん。アキ、物識りだね」
我が姉が眼を輝かせながらこちらを見る。
「常識だよ…」
もはや呆れて溜め息しかでない。
「仲ようですね。…それより、お二人のお名前聞いてへんかったですね。渋谷さんのアシスタントでっかです?」
「うん。そんなもの。谷山麻衣です。こっちは私の弟の彰です」
「どうも」
「僕はジョンと呼んどくれやす。よろしゅうに、です」
やっぱりなんか変な日本語だな、と思いつつ愛想笑いした。
てゆーか、なんでもかんでも“です”つければ良いと思ってるんじゃないだろな、この人。
なんて考えながら視線をテレビに戻すと、玄関の映像画面に人影が見えた。
気のせいかと思ったが、麻衣にも見えたらしい。
白っぽい着物に肩で切り揃えた黒髪、まるで日本人形のような少女。
はっきり言って、そっちの方の迫力満点だ。
「い……今の、何なの?」
ナルは答えず、立ち上がって戸口を振り返る。
開け放した戸口の薄暗がりに等身大の人形が立っていた。
恐怖で竦んだ麻衣の肩を彰が叩いた。
「麻衣、あれ、人間だよ」
「へ?」
ナルは苦々しげだった。
「校長はよほどこの旧校舎の工事をしたいらしい。あなたまで引っ張り出すとは」
少女は無言のまま。表情すら変わらない。
「ナル、知り合い?」
「いや。でも、顔は知っている。有名人だから」
「誰?」
麻衣が訊いた時、少女が紅い小さな口を開いた。
「あたくしのことなら自分で申し上げますわ。原真砂子と申しますの」
不遜なことに、俺たちはこの有名人さんの名前に聞き覚えが全くなかった。
「有名な霊媒師。口寄せが上手い。多分、日本では一流」
ナルが溜め息をこれ見よがしについた。おそらく─否、絶対麻衣に向かって。
「口寄せって?」
この質問にナルが呆れ返った。
このままではまた麻衣が怒り、そして暴れるかもしれない。
ナルが口開く前に俺が説明した。
「霊能者が霊を呼んで話しをさせること」
分かりやすく説明しながら、俺と違って麻衣は日本にずっといるのだから俺より詳しいはずだろ、と強く思った。
何で姉はこんなにも無知なんだ。
なんて泣きたい衝動に駆られている横で、とう本人の麻衣はのん気に
「ああ、テレビでやってるやつね?」
なんて言っている。