ゴーストハント

□第二章
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そして放課後。

言われた通り二人は、ナルの仕事を手伝いに行った。

「こんにちはー」

声をかけると、彼はノートパソコンから顔を上げた。

「何してるの?」

「昨日集めたデータチェック」

何か分かった事があったか聞くと、異常過ぎるくらいないと返答された。

その時、突然女の人の声がした。

「へぇ、いっぱしの装備じゃない」

振り返ると、旧校舎の方から女と男の二人組がやってきた。

「子供の玩具にしては高級すぎるんじゃない?」

小馬鹿にした笑みを浮かべながら言ってきた。

ナルシストのプライドにけちつけると、後が怖いぞ。

案の定、ナルは二人組を冷ややかに見た。

「あなた方は?」

気合いの入った派手こい身なりの女は、いかにも嫌味満載の笑顔でナルに向き合った。

「あたしは松崎綾子。よろしくね」

「あなたのお名前には興味がないんですが」

さらりと言い放つ。

綾子さんとやらは明らかに気を害したようだ。

「ずいぶんと生意気じゃない。でも坊や、顔はいいわね」

“顔は”のところを強調したのは、気のせいではないだろう。

おっかねぇ。

「お陰様で」

綾子は肩を竦めた。

「ま、子供じゃ顔がよくてもしょうがないか。ましてや顔で除霊できるわけないし」

その言葉にナルの眼つきが鋭くなった。

「同業者、ですか?」

「そんなものよ。あたしは巫女」

隣にいた麻衣の驚く気配が伝わってきた。

「冗談?」

「あんなのが巫女かよ」

二人でぼそぼそと会話しているのを後目に、ナルはそれはもう艶やかに上面一枚で笑う。

「巫女とは、清純な乙女がなるものだと思っていました」

ぶ、と小さく吹き出したのは麻衣でも彰でもない。
面白そうにナルと巫女さんのやりとりを見ていた男の方だった。

綾子は男を睨み付け、ナルは居丈高に見返す。

「あら、そう見えない?」

「少なくとも、乙女と言うにはお歳を召されすぎだと思いますが」

ナルが言い切ったとたん、男のほうがついに笑い声を上げた。

綾子は忌々しそうに口許を歪めたが、言い返すことができなかったようだ。

「そのうえ、清純と言うには化粧が濃い」

連れの男にまで言われ、綾子は怒鳴る。

「もとがいいから、そう見えるだけよ!」

そして引きつった笑みでナルに向き直った。

「とにかく!子供のお遊びはここまでよ。あとはあたしに任せなさい」

皮肉っぽくナルを見降ろす。

「校長はあんたじゃ頼りないんですってよ。いくらなんでも十七かそこらじゃねぇ」

ナルは微かに笑みを浮かべたが、眼は思いっきり冷たい。

「お手並みを拝見しましょう。大先輩のようですから」

今度はナルが“大”を強調した。

綾子は大人気もなくぷいと顔を背ける。

そんな様子を気にもせず、ナルは闇色の眼を男に向けた。
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