「ありがとう」を君に

□はじまりのとき
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突然ですが…ココはドコですカ?
うわわ〜っ

今日は入学式。
念願の月臣学園生への第1歩だというのに…っ!
…校舎、広すぎだよ、ココ…。
気付いたら、周りに誰もいないし。

「おい、あんた何やってんだ」
「ひゃあっ!?ごめんなさいッ!!」
「…何、謝ってるんだ?」

急に背後から声を掛けられ、思わず叫んでしまった。
おそるおそる振り向くと、そこには見知らぬ男の子。学ランが新品だから、多分同じ新入生だと思うんだけど。
早くも制服を着崩しちゃってるし、何となく不機嫌そうな感じだし…あ、謝って良かったかも。

「そんなにビビられても、困るんだけど」

ふぅ、と息を吐いた彼は、前髪をくしゃり、とかきあげた。
その顔は、ホントに困っているみたいで…あれ、怒ってる訳じゃ、ないのかも。

「あんたも新1年だろ?入学式くらい、サボんないで出とけよ」
「サ、サボりじゃないよ!ただ、ちょっと…」
「ちょっと?」
「えと…」

さすがに、迷ったなんて、カッコ悪すぎて言えない。
私が口ごもっていると、しばらく答えを待っていた彼が、少し首をかしげた。

「もしかして、迷ったのか?」
「う…!!」

私の反応を見て、肯定の意を感じたんだろう。
そのまま、くるり、と背を向けると、少しだけ振り返って言った。

「入学式は、あっち。俺はこれから向かうけど、あんたは?」
「い、行く!行きます!!」

慌てて彼の隣に並んで、歩き出す。
彼はさりげなく、私に歩調を合わせてくれた。

「ね、あなた名前は?」
前かがみになって顔を覗き込んだ私に、ちら、と視線を寄越したと思ったら、また前を向く。

「ナルミ」
「なる…?」
「漢字で書くと、海鳴り、をひっくり返して、な、る、み」
「鳴海くん、か」

結構、優しい人なのかもしれない。
仲良くなれたらいいな。
漠然と、そう思った。

「ありがとう、鳴海くん」

あっという間に式場が見えてくる。
ふわり、と笑う鳴海くんを見て、私の顔もほころんだ。

―――これからも、よろしくね。鳴海くん。


―――Fin. Thank you for Reading!!
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