「ありがとう」を君に

□幸福なペット
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「「じゃーんけーん、ぽんっ」」
「げっ」
「やたっ!香介、皿洗いッ!!」

日曜の午後。
遅い昼食(兼、朝食の日も多い)の後片付けを、じゃんけんで押し付けあう。
毎週ぐるぐると、飽きもせずに続けられる日常。
週に1度の、贅沢な時間。

「ね〜、こーちゃんっ♪今度ココ行こうよ」
「ちゃん付けで呼ぶなっての。ちょっと待てよな」

ざばざばという水音に負けないよう、互いに声が大きくなる。
待て、と言われて大人しく床に転がっていた私の隣に、やがて彼が、すとん、と腰を下ろした。

「どこだって?」
「これこれ。今度新しく出来たんだって。新しモノ好きの血が騒ぐっ」
「へぇ。…って、いつの見てんだよ。この雑誌、去年のじゃねーか」
「えー、あれ?」
「なーにが、新しモノ好きなんだか」
「てゆーか、こんなのいつまでも置いとく香介が悪いっ」

うりゃ、と脇をくすぐると「うわ!」と叫んで彼が転がった。
すかさず足で押さえつけにかかるも、簡単にひっくり返されてしまう。
ひとしきり暴れて、気が付いたら、部屋が夕陽に赫く染まっていた。
楽しい時間はどうして、こんなにあっという間なんだろうか。

「はぁ、もう帰んなきゃ」
「あー、じゃあ出掛けるのは、また今度だな」

そう言うだけで来週だって、きっとドコにもいかないんだろう。
別にお互い、出掛けたい訳じゃない。
ただ、未来の約束をしていたいだけ。

「今週もありがと。また来週ね」
「おぉ、また来週」

彼は、約束は守るヒトだから。
僅かな繋がりも、途絶えないように。


―――Fin. Thank you for Reading!!

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