「ありがとう」を君に

□call your name
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「ねー、ゼロイチ〜」

この名で呼ぶと、彼は決まって不機嫌そうな顔をする。

「ゼロイチって呼ぶな」
「いーじゃない、ゼロイチ。面白いよ」
「名前に面白味は求めてない」
「秋くんだって、そう呼んでるし」

そもそも、彼の呼び方を聞いて、私も“ゼロイチ”と言うようになったのである。

「あいつの話はすんな」
「何それー。友達でしょ?」
「断じて、ち、が、う!」
「そんなに力、込めなくたって良いじゃない。…私は秋くん、大好きなんだけどなぁ」

…もちろん、彼とは意味の違う“好き”だけれど。

だが、私の呟きは彼には届かなかったらしい。
というか、私が「秋くん」と言う度に、零一の眉間にしわが寄っていく。
…名前を聞くのもイヤなの?

私の表情が曇った事に気付いて「げ」という顔をした彼は、考え込むように、しばらく目を泳がせた。

「…お前がっ」
「?」
「秋、秋ってうるさいから、苛々すんだよ…ッ」

…はい?
えーっと、それは、つまり…

「美味しそうだね」
「…はぁ?」

焼き餅。
いや、違った。ヤキモチ。
あまりに縁がなさすぎる言葉で、咄嗟に脳内変換できなかった。

自然と、笑みが溢れてくる。

「よし、今日の目的地は深山木薬店に決まり!」
「なっ、お前、人の話聞いてたのかよっ!?」

貴方のその感情が、ただ嬉しくて。
腕を絡めて「ありがとう」と呟いた。
一瞬、黙ったキミには、きっと伝わった…よね?


―――Fin.Thank you for Reading!!

〜Are you happy?〜

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