「ありがとう」を君に

□拾われ猫
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梅雨の雨は、好きじゃない。
冬の冷たい雨は、いっそ清々しい。でも、日本の夏を予感させるぬるい空気に、じっとりした重い雨は、身体だけでなく気持ちまで沈み込ませる。

なのに、私はいつも、傘を持たない。

「まぁ僕としては、雪だか雨だかわかんないモノ被って、寝込まれない分、梅雨の方がマシだけどね」

何、勝手な事を。

「…ほら、帰ろ?」

差し出された手は、私の手を温かく包み込む。

「ほらぁ、こんなに冷えてッ。傘がないなら、せめて雨宿りくらい、しててよね」
「…いちお、してた」
「こんなポタポタ雫が降ってくる木の下なんて、雨宿りって言わないのっ」

めっ、と子どもをあやすように言いながら、傘を持っていない方の手で、肩を掴んで引き寄せられる。

「そんなにくっつくと、カノンが濡れるよ?」

かなりの時間、雨に濡れていた私は、笑っちゃう位にびしょびしょなのだ。

「そんなの、気にしなくていーから。帰って着替えよ」

何でもないように笑って、歩き出す。
カノンの明るい茶髪が、湿気を含んで心持ち、重たく見えた。
…大分、捜させちゃったのかな?

「…ありがと、カノン」
「どういたしまして。でも、お礼を言う位なら、傘持たない?」
「それは、ない」

即答した私に、なんでー!?と笑う彼を見て、つられて笑った。

――だって、私が傘を持たない限り、貴方が捜しに来てくれるんでしょう?
なら私は、雨の日を嫌いにならないでいられるよ。

まるで捨て猫を拾うみたいに、君はいつも、手を差し伸べてくれるから。


―――Fin.Thank you for Reading!!

〜Do you like a rainy day?〜

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