「ありがとう」を君に

□Hello!My Darling
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「もしもし?ダーリンお願いします」

「………少々、お待ち下さいね」

うわ。
取り次いで貰えそう。
私、名乗ってもないけど、いいの?

最近、携帯ばかりだったから、久々に使う家の電話。
受話器を握り締める手が、ちょっと震えた。

「――はい」
男性にしては少し高めの声が、電話口に出る。
「あ、」
「深山木薬店です。ただいま、操縦中の為、電話に出る事ができません。ピーッと言う音の後で、お名前と、ご用件をどうぞ。
ぴん、ぽん、ぱん、ポン♪」

ピーッて言ってないし!!

「あーき〜ぃ」
「それは僕の名前です」
「わかってるよ」
「ご用件は?」
「別にないけど…てか、操縦中って、何。運転中の間違いじゃないの?」

ツッコミどころがありすぎて、訳がわからない。
すると電話の向こうで、秋が笑う気配がした。
声に出さずに、息遣いで感じる笑み。ちょっと、どきどきする。

「妄想イタズラ電話の相手を、操縦中」
「な、何それっ」

私の事かっ!?

思わず叫ぶと、今度こそ秋は、声に出して笑い出した。

「そりゃあ、電話掛けてもいいとは言ったけど。まさかこう来るとは思わなかったんだよね」

そうだろうさ。
何とか驚かせたくて、無駄に“私らしくなさ”を追求した結果だもの。

「あ、ごめん。今ちょっとお客さんなんだ。後でこっちから掛け直すよ」
「え、いーよ。ごめん、仕事の邪魔して」

秋の真面目な言葉に、少し慌てた。
だが、彼は次の瞬間、笑いを含んだ声で、こう言ったのだ。


「何言ってんのさ。ちゃ〜んと掛けるから。“ハニーお願いします”って」


…げ。


その後、電話が掛かってくる度に飛びついていた私が、実際に秋からの電話に出られたかどうかは……思い出したくない過去の1つである。


―――Fin.Thank you for Reading!!


―〜Rin♪―

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