「ありがとう」を君に

□Last love song
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部屋の片隅に置いた、シングルソファー。
既に傾きつつある陽を浴びて、くっきりと形を浮かび上がらせている。
まだ新品特有の匂いをさせるソレを見せられて、零一は僅かに眉をひそめた。

「ったく、珍しくバイトが終わるの待ち伏せてるから、何かと思ったら…」
「なーに〜?何なら、いつでも待ち伏せてあげるけど?」

ふふ、と笑う私を軽く睨みながら、彼は目の前のソファーに座る。
新しすぎて、私の部屋には未だ不釣合いなソレは、不思議と彼が座った途端、周りに溶け込んで見えた。

「すごーい。零一が座ったら、馴染んだ!」
「…馬鹿にしてるのか?」
「何で!?全然ッ!むしろ感激っありがとうっっ」

自分の部屋を持ったら、絶対欲しかったソファー。
悩みに悩んで、ようやく巡り合ったコレが、家にやってきたのは、今日の昼間だった。
嬉しくて、嬉しくて。
一刻も早く、報告したくて。
見に来て欲しくて。

気付いたら、彼のバイト先まで迎えに行ってしまっていた。
従業員入り口の脇に座り込んでいた私を見た時の、彼の驚きようったら、もぅ。

「?…何、笑ってんだ」
「何でもな〜い」

よいしょ、と零一が座る脇にお尻を入れる。
肘掛に足を乗せて、横向きに座った。

「…狭い」
「あったかいっしょ?」

ぴたり、とつけた背中から、彼の体温を感じる。

「暑い」
「愛の熱だ〜!!」

おどけて叫ぶと、頭上で苦笑する気配がした。
あぁ、やっと笑ってくれたね。

嬉しさから、また笑いがこみ上げてくる。
寄り掛かるようにして見上げたら、夕陽に照らされて染まる零一の顔が、すぐ傍にあった。

「零一、顔赤いよー?」
からかうように言いながら、両手を伸ばす。
私が倒れて落っこちないよう、さりげなく背中を支えてくれた。
そのまま彼の首に腕を絡めて、ぎゅっと抱きつく。

はっきりと熱くなる彼の横顔を、肌に感じた。くすくすと笑いが零れて止まらない。


…もう少しだけ、このままでいさせてね?
せめて、この夕陽が沈むまで。


―――Fin.Thank you for Reading!!
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