「ありがとう」を君に

□髪を結い上げて
1ページ/2ページ

「はい、お土産」

大学の階段教室にて。
唐突に目の前に現れたのは、U字型のかんざし。
何種類もの花を集めて、小花が下がっているものだ。

「うわ、可愛いっ!ありがと〜、総和ッ!!」
「この前の夏祭り、来られなかったでしょ?」

にこにこと笑いながら、総和が1段下の席に後ろ向きに座った。
最近の私の髪型は、結い上げた髪をかんざしで留めているだけである。
早速、使わせて貰うとしよう。

「それにしても器用よね〜」
「ん、何が?」

1段高い、こちらの机に顎を乗せて見上げてくる。

「そんなの1本で、簡単に髪の毛纏め上げちゃってさぁ。今日だって、その髪型、決まってるじゃない」
「えへへー。何なら、総和にもやったげようか?」

悪戯っぽく、顔を寄せて言ってみる。
すると総和は、慌てて身体を離した。

「いいわよ、ワタシはっ!恐れ多いわー!!」
「何、動揺してんのさ。いいからやらせてよ」

よいしょ、と机から身を乗り出し、彼の1つに縛っただけの髪を解く。
そのままやろうとしたけど、体勢が苦しくて結局、総和の隣に正座した。
彼はもう、されるがままである。

「実は総和の髪って、いじってみたかったんだよね〜」
「それは光栄だわぁね」

総和の長い赤毛を、ぎゅぎゅっとねじり上げる。
くるりと回せば、あっという間に一纏めだ。

少し考えて、自分の髪からかんざしを引き抜く。
そのまま彼の髪を留めれば…
「はい、完成〜」

ありがとう、と振り向いた彼が、ぎょっと目を見開いた。
ぺたぺた、と自身の頭を触って確認する総和を眺めながら、自分の髪もくるくるっと結い上げる。
さっき貰ったばかりのかんざしで、髪を留める私を見た総和が、ふいに顔を赤らめた。

「なーに、赤くなってんのさ」
「いや、あはは…」

よいしょ、と自分の席に戻る私の動きに合わせて、総和が見上げてくる。
視線が合うと、嬉しそうに目を細めて。

「お揃いだわね」

ふふ、と笑う彼につられて、私も思わず笑った。
今日も真夏日である。


―――Fin.Thank you for Reading!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ