「ありがとう」を君に

□プレゼント
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「おはよー、鳴海くん」
「あぁ。そこ、俺の席なんだが」
「うん。貰ってま〜す」
「せめて、借りてるくらいにしとけ」

面倒臭そうに一瞥して、鞄を机に置く。
何気なく目が合ったので、にこ、と笑ったら変な顔をされた。
…まぁ、いいや。
大きく息を吸い込んで、お腹から声を出す。

「鳴海くん!誕生日おめでとう!!」
「は?そりゃどー…」

きょとん、とする鳴海くんにクラス中の注目が集まった。
あははっ、伊達に声はでかくないのだよ。

「何?鳴海くん、今日誕生日なの?」
「何だよ鳴海、おめでとう!」
「オメデトー鳴海くん!」
「あぁ!もっと前に教えてくれてたら、プレゼント用意したのに!」
「プレゼント、何が良い?」

「…え」

わぁっと盛り上がるクラスメイト(じゃない子も混ざってるけど)に囲まれて、彼は目をしばたいている。
うむ、大成功。
人波に揉まれないように、そっと輪の外に抜け出した。
今頃どうなっているのかと、振り返って背伸びした瞬間、ぐい、と腕を掴まれる。

「ぅひゃっ」
「こら、変な声出すんじゃない」
「え?鳴海くん、何でこっちにいるワケ?」
「そりゃ、出てきたからに決まってるだろ。ったく、何がしたいんだ、あんたは」
「えと、鳴海くんへのプレゼント」
「これのどの辺がプレゼントなんだ」

呆れたように言って、掴んでいた腕を離す。
クラスメイトたちは、思い思いに誕生祝いの言葉を述べて、席に戻り始めていた。

「鳴海くんは、こんなに皆に愛されていますのよって教えてあげたの。立派なプレゼントでしょ?」

人差し指を頬に当てて、おどけて言ってみる。
言い方はふざけているけど、気持ちは本当だ。

「何なら、カフェでケーキ位、奢るけど?」

前に調理部でお菓子の作り方を教授したらしいから、甘いモノも好きなんだろう。
前髪で影になった表情を見ようと、下から覗き込もうとしたら、額を軽く小突かれた。

「いった〜ぁ」
「嘘つけ」

顔を上げると、にっと笑う彼の顔。
口の端を上げる様子が、何だかちょっと悪戯っ子みたいで。

「これで充分だよ。お腹いっぱいだ」
「…!」

タイミングよく、始業のチャイムが響いた。
時計を確認してから、もう1度だけ私の方を見て、ぽす、と頭を叩く。

「ありがとうな」

鳴海くんの言葉はチャイムにかき消されて、私にしか届いていないみたいで。
優しく深い、その声が1日中、耳に残って離れなかった。


〜Happy BirthDay!!〜



―――Fin.Thank you for Reading!!
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