「ありがとう」を君に

□酔った勢いで
1ページ/2ページ

世界の記念日を祝う会、もとい、いつもの飲み会。
日付も変わって、いい加減帰ろうかな、と思っていたら、隣にするり、と人影がやってきた。

「なーに?今日はあんまり飲んでないんじゃない?」
「総和はいつもより回ってるんじゃないの?」

そんなに弱い方ではないのに、顔を赤くしてトロトロとしている。
…あぁ、寝不足なのに飲んでるのか。

「今日はこの辺にして、もう寝たら?何なら総和は泊めて貰いなよ」
「えー、ワタシだけ?」
「私は帰るもん」

酔っ払いの世話は、悪いけどごめんだ。
私は明日も1限から授業なんだよ。

「もう少しいいじゃないの。ちょっと話くらい聞いて行きなさいよ」
「なーに?面白い話なら聞いてくけど」
「…おもしろいはなし?そーねぇ」

ぼんやりと考えている総和を見ていたら、ふと悪戯心に火が点いた。
相当酔っているみたいだし、明日には何を話したかなんて、覚えていないだろう。

「じゃあさ、総和の好きな人のこと、教えてよ」
「すきな〜ぁ?やだ、恥ずかしいじゃない」
「恥ずかしいってことは、いるんだ?もう告ったの?」

そんな話は初耳だったので、思い切り食い付いてしまう。
まず誰?と聞けないところが、何とも情けないけれど。

「する訳ないでしょ〜う!良いのよ、当分このままで」
「いいの!?だって、もしかしたら誰かに取られちゃうかもしれないよ?」
「あぁ、それは困るわね〜」
「でしょ?」
「でも、一応それらしいコトを匂わせてみたりはしてるのよ?これでも」

全っ然気付いてないみたいだけどぉ、と力なく笑う。
でもその前に一瞬見せた、寂しそうな顔がやたら男っぽくて、不覚にもどきどきしてしまった。

「そんな言い方じゃ、本気だって取られてないんじゃないの?はっきり言わなきゃさ」
「そうなのかしら。じゃあ、ちゃんと言わなくちゃね」

あぁ、何で私は煽っちゃったりしてるんだろう。
いや、総和は大事だから励ましたいけど、それで上手くいっちゃったらそれはそれで…

「〜〜よ」
「へ?」

もやもやと考えていたら、聞き逃した。
妙に真剣な目をしているから、大事な事だったらしい。

「何?もっかい」
「何度も言わせないでよ。ワタシは、貴女が、好きよ」
「…は?」

今度はちゃんと聞こえた。
が、意味が咄嗟に理解できなかった。
ぽけっとしていたら、彼は満足そうに笑って、そのまま眠ってしまうし。

…はは、まさかね。
これは、私も相当酔っているらしい。
音を立てないように立ち上がると、そのまま黙って帰路に着いた。


ただ、私はこのとき失念していたのだ。
この部屋にいたのは、私と総和だけじゃなかったこと。
そして、意識がはっきりしていたのも、私だけじゃなかったってことを。


―――Fin.Thank you for Reading!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ