甘き香り、陽炎に似て

□believed it
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「実は私たち、付き合うことになったんですvV」

「「…はい?」」

ひよのと香介の声が、見事にハモった。
2人の目の前では理緒が、歩の腕に自らの腕を絡め、楽しそうに笑っている。
歩も照れたような顔をしているが、迷惑そうにはしていなかった。

瞬きを繰り返すひよのと、口をぱくぱくと動かす香介の様子は、ぜんまい仕掛けの玩具のようである。

「は?だって理緒、そんなの聞いてねーぞ?」
「今、言ったよ」

やっとの事で喋った香介の言葉に、理緒はさらりと返す。
一方ひよのは、黙ったまま、ひたすらに歩を見ていた。
怒っている訳でも、喜んでいる訳でも、悲しんでいる訳でもなく。ただ、驚いた表情のまま、じっと見つめている。

そんな彼女の視線に気付いた歩も、少し驚いた顔をする。
だが次の瞬間、彼は理緒と視線を合わせ、薄く笑った。
優しく、温かく、穏やかに。
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