甘き香り、陽炎に似て

□an oak leaf
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目の前に出されたのは、濃い緑の葉にくるまれた団子。真っ白な生地には、うっすらと中の餡が透けている。

「えーっと…?」
「柏餅。知らないのか?」

甘いものに合うよう、心持ち濃い目に入れた緑茶を並べながら、鳴海歩は平然と言ってのけた。

「知ってますよ!そうじゃなくて…」
「まぁ、こどもの日はとっくに過ぎちまってるけどな」

それなのに、こんなに美味しそうな柏餅が出てくるから、不思議なのだ。
先程付き合った買い物で、何だか妙なモノを買うとは思ったのだが。
まさか、柏の葉っぱだったとは。
毎度の事だが、このおやつも当然、手作りなのだろう。

あまりに美味しそうなソレを、ひよのは、しばらくじっと見つめていた。…が、とうとうその魅力に負けた。

「いただきます」
「召し上がれ」

もぐ。


………


言葉に、ならない。

予想通り。いや、予想を遥かに裏切って、美味しかった。
それがいつもの事だと言うのだから、何だか泣けてきそうである。
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