甘き香り、陽炎に似て

□an oak leaf
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ぱち。

「ごちそうさまでした」

手を合わせて、深々とお皿にお辞儀した。
本当に、彼の作るものはご馳走だと、いつも思う。

当の歩は、既に自分の分を食べ終えて、静かにお茶をすすっていた。



………



沈黙が降りる。


ひよのは、お皿に残された緑の葉っぱを眺めて、何気なく呟いた。
「そういえば、桜餅の葉っぱは食べられるのに、柏餅の葉っぱは食べられませんね」
「…食いたければ、止めないぞ」
「止めて下さいよ」

この人は、確実に自分を女の子扱いしていない。
いつもの事だと思いながらも、やはり、むっとしたので、軽く睨みつけておく。
だが、これもいつもの事ながら、それ位で動じる歩ではなかった。

「…食べないのか?」
「食べませんよ!!」

声が荒くなるのも、当然である。
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