甘き香り、陽炎に似て

□shooting star
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ふと目を開けると、部屋は真っ暗になっていた。
いつの間にか、眠ってしまったらしい。
窓辺に人の気配があるが、よく見知った者だったので、警戒心も働かない。

アイズは、顔にかかる自身の髪をかき上げながら、ゆっくりと身体を起こした。
ぱさり、と軽い音がして、背後を上着が滑る。
その音で、上着の持ち主が振り向いた。

「あぁ、おはよう、アイズ。って言っても、もう夜だけどね」
「カノン…」

思わず名前を呼んだが、特に続く言葉もない。
カノンは不思議そうに首をかしげて笑うと、視線を窓の外に戻した。
月の光が、彼の明るい茶髪を輝かせる。
ぼうっとした光をまといながら、彼は一心に空を見上げていた。


「…空に、何かあるのか?」
「うん?そうだねぇ。月と星があるね」

のんびりとした口調からは、冗談と本気の区別が付かない。
だが、喋りながらも外れることのない視線から、彼の意識の先は確かに、月と星なのだとアイズは思った。

彼の邪魔にならないよう、静かに歩み寄る。
隣に立つと、カノンは視線を寄越して、ふわりと笑った。
窓辺は月光で驚くほど明るい。
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