甘き香り、陽炎に似て

□SHOOTING☆STAR
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「あ」

何気なく見上げた空に、何かが尾を引いたように見えた。

「え、何!?こーすけくん、流れたのっ!?」
「え、わ!どこにだいっ!?」
「は?いや、今あっちを流れたような気がしなくもない…」
「何でそんな、曖昧なのっ!!」

女2人の勢いに、香介は思わず1歩、後退した。
あまりに一瞬だったので、見たような気がしただけなのだ。
それでも、理緒と亮子には充分だったらしい。
“今夜は本当に流れ星が見える”という証明になった、とでもいう事だろう。
次は見逃すまいと、2人はますます気合を入れて、夜空を見つめ始めた。

香介は暗いリビングで、のんびりと腰掛けると、そんな彼女達の後ろ姿を眺めていた。
何という事もない、ただ時間が流れるだけ、という幸福。
そんな言葉が頭をよぎって、苦笑いをする自分がいる。


「あ、流れたっ」
「メロンが食べたい、メロンが食べたい、網目模様のめろんがたべたい〜ぃ!!」

平和な願いに、思わず吹き出してしまった。
すかさず、理緒がこちらを振り向く。

「笑うんだったら、メロンを今すぐ出してみろ!!」
「悪い、そりゃムリだ」
「甲斐性なし〜」

ぱたぱた、と手を振りながら視線をやると、亮子が窓から身を大きく乗り出していた。
真上の空まで見ようとしているようだ。
そうまでして、見たいものだろうかと、ぼんやりと思う。
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