甘き香り、陽炎に似て

□SHOOTING☆STAR
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「何だよ亮子。お前も願い事とかすんのか?」
「別にいいだろ、どうだって!」

振り返りもしない亮子に代わって、理緒がニヤリと笑った。

「やだなぁ、こーすけくんてば。あの真剣さを見ればわかるでしょ?」
「何だよ、お前は亮子の願いだか何だかを、知ってんのかよ?」
「ちょ、理緒!?」

慌てる亮子の様子からして、理緒は彼女の願いとやらを知っているらしい。

「まったく、野暮なコト聞かないでよね」
「何が野暮なんだよ」
「ん〜、そーいうトコ?」
「どーいうトコだっ」

ちら、と当の亮子に目をやると、成り行きを見守っていたらしい彼女と、ばっちり目があった。
次の瞬間、亮子の顔が赤く染まる。

「だーッ!ホラ、願い事は他の誰かに知られると、叶わないとか言うだろ!?」

だから言わないんだ、と早口でまくしたてた。
そんなに知られたくないことなのか、とかえって不思議に思われるという事態は、想定していないらしい。

「は、はう〜ぅ、私のメロンが〜ぁ」
「てか、それって何か違う話じゃなかったか?」
「そ、そうだったっけ!?」
「そうだよ〜、違ってくれなきゃ困るよぉ」
「ま、どうでもいっか」

よくないー!という理緒の叫びは、軽く流してみる。
大事なのは結局、それを信じるかどうかという個人の問題なのだから、ここでの口論は、本当にどうでもいいことなのだ。
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