セピア色に滲む光に

□my name…
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【ふ】


今日は久々に、とても天気が良かった。
リビングで甘いコーヒーを飲んでいると、ザギが洗濯物を干している。
やたらと明るい空を見ていたら、ふと思い出した。

「…僕も布団、干そーっと」

快眠の準備は、自分で整えなければ。
いそいそと部屋に戻り、ロフトの窓から屋根に向けて、布団を放り上げる。
自分も追い掛けて布団を広げながら、何気なく隣を見た。

「おー。ザギはともかく、リベザルもちゃんと干してたかー」

だが、それだけではなく。

「でも、その上で自分が寝ちゃあ、意味ないんじゃないのか?」

屋根の上に広げた布団に、丸くなって寝息を立てる小柄な少年。
せめて原型に戻っていれば、問題もないのだろうが。

「ふむ。そっか」

ぱちん、と指を鳴らして召喚した試験管の蓋を外す。
そのまま少年の鼻先に近付けて、待つ事3秒。

「うわぁあっ!?何?何!?」
「あはは、おはよう、寝ぼすけ」

もぞもぞと自分の服から這い出してきた小さな毛玉は、涙目でこちらを睨み上げた。

「師匠!?何なんですか、さっきの臭い!」
「…知りたい?」
「……い、いや、やっぱり良いです…」

あっさり諦められたので、自分の布団に足を伸ばす。
裸足で浴びる陽射しが、やたら心地良かった。

「僕も日向ぼっこしよっかな」
「あ、あの、俺がそっち行っても邪魔じゃないですか?」

何を言ってるんだ?と見ると、懸命に服を布団の脇にまとめている。

「小動物限定、大歓迎」

ぱっと全身で喜びを表現したリベザルは、転がるように広げたての布団に乗ってきた。
彼の短い赤毛は、布団と同じ、晴れの匂い。



『ふとん』

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