セピア色に滲む光に

□my name…
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【か】


「カラスは頭が良いからな。お前の言葉だって、ちゃんと理解してるんだぞ?」

科学的根拠があったかどうかは怪しいものだけど、という出かかった感想を飲み込むと、目の前の赤毛は、ぱっと目を輝かせた。

「ホントですか!?」
「ホントかどうか、実際にカラスに聞いてみればいいだろう?」
「そっか!そうですよね!!」

う〜ん、としばらく唸った挙句、ベランダに出て実践。

「カラスさーん!聞こえてたら返事して下さ〜い!」

………

「ししょ〜」
「1回失敗したくらいで泣きそうになるな。聞こえなかっただけかも知れないとか、考えろよ」

泣きそうになったり、笑顔になったり、くるくると忙しい。
ぐりん、と勢いよく外に向かうと、大きく息を吸い込んだ。

「カーラースーさーんッ!!」

カー

「!!」

返事が来た。

「師匠!すごいですよ!お返事もらえました!!」
「あぁ…ふ、よかったな…くくっ」
「…師匠?」
「…は、あははっもうダメ、はははっ」

秋の笑いに反応してか、カラスが空で鳴いている。
ようやく、からかわれていた事を察した、リベザルの叫び声がさらに加わって、賑やかなある夕方の出来事。



『からす』

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