セピア色に滲む光に
□my name…
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【や】
「…安売り?」
「うん、セールだよ」
滅多にない機会、と笑ってみせると、目の前の友人はきょとん、とした。
「良かったら、直也も見に来るといいよ」
「でも俺、あんまりお金ないしな…」
「だから、安いときに買うんでしょ?」
しばらく悩むように目を泳がせていた彼は、やがてひとつ頷いて笑った。
「まぁ、備えあれば憂いなしって言うしね」
「お、よく知ってるじゃない」
「そりゃ、俺だって一応、大学生だからね」
「知ってて当然?」
ふふ、と笑うと直也も笑顔を零す。
「それって明日?薬って高いからなぁ。そんなコトして大丈夫なの?」
「明日じゃないし、薬でもないから大丈夫」
「…え?」
さっきの3倍くらい間のヌケた声。
思わず吹き出しそうになるのを、懸命に堪えた。
「ウチの棚に並んでる、僕のコレクション。ザギがとうとうキレちゃったんだよね」
「あぁ、あの…」
「うん。ちなみに来週の土曜だからヨロシク」
しばらく間があって、どうしたのかと思ったら、ふいに彼がにこ、と笑った。
「きっと行くよ。そっちの方が面白そうだ」
「直也の期待に沿えるかは、分かんないけど?」
さて、来週の土曜、何を出してやろうか。
『やすうり』