セピア色に滲む光に

□waiting for you
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長い連休が明けると、一気に日が伸びた気がする。
夕方までの授業が終わっても未だ明るい帰路を見て、直也の歩くペースは、自然とのんびりしたものになっていた。
ひんやりとした風にかき回された黒髪を、手で撫で付けながらアパートの階段を登る。
ふと目を向けると、家の前に見覚えのある人影が見えた。

「あれ、秋?何してるの、こんなトコで」
「何って…直也を待ってたに決まってるでしょ」

呆れたように顔をあげる秋を見て、そりゃそうだね、と笑って誤魔化す。
聞きたかったのは、何してるのかじゃなくて、どうしてココにいるのかだ。

「もしかして、結構待ってた?ごめんね」
「待ってたのは僕の勝手だから、直也が謝る事じゃあない」
「うん、でも…そういえば秋、今日お店は?」

聞いていた定休日は、今日ではなかったハズだが。
すると秋は、バツが悪そうに視線を外に逃がした。
…サボって来たのか。

「謝る相手は、秋じゃなくて座木さんだったかな」
「今日の分はちゃーんと働いてきたし、ザギの許可も出たもんね〜」

口を尖らせる秋の拗ねた口調に、思わず笑いが零れた。
がちゃがちゃと家の鍵を開けていると、彼が隣で壁に寄り掛かるように、顔を覗き込んでくる。

「秋?」
「誕生日。オメデト、直也」
「あ…」

にこり、と花がほころぶような笑みが浮かんだ。

「これでまた、僕の年齢に1歩近付いた訳だね」
「秋だって毎年、ちゃんと年とってるだろ?近付いたりはしないよ」
「ちぇ、気付いたか」

出来るだけ素っ気なく言うと、秋は悪戯がバレたかのように、べ、と舌を出して目を逸らす。
それを見たら、あはは、と声に出して笑ってしまった。

「ねぇ秋、これから総和たちが来るんだけど、一緒に飲んでく?」
「また例のサークル?今日は何のお祭りなのさ」
「そんなの、決まってるよ」

きょとん、とする秋に、悪戯っぽく目配せする。
自分で言うのは、何だか恥ずかしいのだが。

「木鈴直也の生誕記念祭、だって」

ぶっ、と秋が盛大に吹き出した。
震える声で示された参加の意志に、頬が緩むのを隠すように家の中へ入る。

今夜のお祭り会場は、もちろん主役の部屋。
さぁ、皆が来る前に片付けないと。


 ≪Fin.≫
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