水平線、飛び越えて

□ゴミ箱
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「カノン、それは?」
「うん?あぁ、これね。亮子に貰ったんだ」

ふふ、と笑う様子が妙に静かで、アイズが首を傾げた。

「嬉しくないのか」
「うーん、フクザツ、だね」

困ったように眉を下げる兄の向かいに、腰を下ろす。ソファに落ち着くと同時に、カノンが手元の物を寄越してきた。

「元々は、浅月に渡すつもりだったみたい」

あぁ、とアイズが目を細める。
その表情に含まれた、呆れのようなものを見て取って、カノンが小さく笑った。

「ゴミ箱に捨てようとしてたから、僕が貰ってきちゃった」
「そうか」
「アイズ、いる?」
「いや、カノンが欲しくて貰ったんだろう?」
「…まぁね。でも」

どこか寂しげな兄の笑顔に、アイズが眉間を寄せる。

「ねぇ、アイズ」

視線だけで、続きを促す弟に、緩く笑みを返す。僕は本来、君ほど優しくないのだけど。

「これ、どっかの馬鹿に押し付けてくるよ」
「あぁ」

仕方ないよね。
彼女が一生懸命選んだコレは、彼以外には笑っちゃうほど似合わないんだもの。



≪ゴミ箱≫

20080630+20090528/Eyes+Kanon(→Ryoko→Kohsuke)



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